消費税率引き上げとウォーターベッド効果3

昨日は、消費税を転嫁できないと、利益をいかに圧迫するかをご紹介しました。
コスト削減等ができないのであれば、消費税転嫁(つまり、8%分もらうこと)は絶対に必要です。
本日はその続きです。

さて、しかしながら、消費税転嫁をせずに、税込価格を据え置く業者は確かにあります。
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「良品計画は価格据え置き 消費税増税時に」
生活雑貨店「無印良品」を展開する良品計画は7日、4月の消費税増税時に店頭の商品価格を据え置く方針を明らかにした。3%の増税分はコスト削減などで対応し、実質的に値下げする。価格表示については税込みの総額表示とする。
共同通信より
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記事のように、税込価格を据え置いて、さらに利益を残すためには、それ相応のコスト削減が必要になるわけです。

では、このとき、なにが起こるのか?

順当に考えて、ウォーターベッド効果の第一段階にあたる値下げ要求(仕入れ元への消費税分の転嫁拒否など)がくるわけです。

本来消費者が支払うべき3%を、広義の売る側が負担するのです。
どこかで、誰かが、“ババ”を引かなければなりません。
自助努力による3%削減ができるのだとしたら、とっくに実現しています。

繰り返しますが、消費税転嫁(つまり、8%分もらうこと)ができなければ、致命的ダメージです。
しかしお客様(個人でも法人でも)の顔色は気になります。

実際、1997年に消費税が3%から5%に引き上げられた際には、消費税額を適正に転嫁できた中小企業者は約50%といわれています。
これだけが要因ではありませんが、1997年から1998年にかけて、倒産件数が跳ねあがった要因の、ひとつといって間違いないでしょう。

そのような歴史を踏まえて、今回は、「消費税転嫁対策特別措置法」という法律ができました。

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中小企業・小規模事業者が取引先に商品などを納入する際に、大規模小売事業者等が、減額や買いたたきなどにより消費税の転嫁(消費税分を上乗せすること)を拒否することなどを禁止すること等を定めた法律です。
「消費税転嫁対策特別措置法」は、事業者の皆さんの大切な利益をしっかり守ります!
中小企業・小規模事業者のための消費税の手引きより
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法律のウラを読めば、前回は消費税の転嫁拒否、つまり、ウォーターベッド効果の第一段階があって、“皆さん”を困らせましたが、今度は大丈夫です、ということですね。

詳しくはマニュアルをご覧いただければと思いますが、
転嫁拒否にあたる、減額、買い叩き、商品購入、役務利用または利益提供の要請、本体価格での交渉の拒否が法律で禁止されました。
さらに、転嫁拒否等の被害を受けた事業者が、その事実を公的機関に通告することができ、
その通告に対する報復行為(取引数量の削減、取引停止、その他不利益な取扱いをすること)も禁止されました。

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Q.転嫁拒否をされても仕返しが怖くて、なかなか相談できないのですが…。
A.転嫁拒否等の被害を受けた中小企業等が、その事実を自ら公正取引委員会等に申し出ることは期待しにくいという実態があります。特定事業者(買い手)による報復行為が行われた場合、特定供給事業者(売り手)による情報提供や調査協力が一層困難となることで、消費税転嫁対策特別措置法の円滑な執行に支障を来すことになりかねません。政府としては、国等に通報していただいた方々の保護等に万全の措置を講じるとともに、報復行為に該当する行為があると認める場合、厳正に対処し、消費税転嫁対策特別措置法の規定に基づき勧告および社名の公表といった措置を講じます。
中小企業・小規模事業者のための消費税の手引きより
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法律による効果がないとはいいませんが、これで安心かといわれれば、
穴だらけのようにも思えます。
例えば、卸業者の立場で考えてみてください。

最も取引額が大きい、大手取引先との関係を考えれば、
「自分の身は、自分で守る」だけでは済まないのです。
大手取引先が傾けば、自分の事業も傾きます。

わかりやすい圧力による転嫁拒否ならば、法律を盾に取ることもできるかもしれません。
しかし、相手が泣き落としで出てきたら?
もしくは、もっと強い脅迫まがいの態度に出てきたら?

そして、消費税転嫁に気持ち良く応じてくれた取引先が、
「消費税の影響で、とても厳しい。申し訳ないがおたくからの仕入れを減らしたい」
と言われたら?

“ババ”の何%分かを引き受けてしまうかもしれません。

こうして“ババ”が卸業者にやってきたら、どうなるか。
今度は卸業者が、コスト削減等の努力をすることになります。

大手取引先に対して、“ババ”をひかされた分、小規模取引先には強気になります。
消費税8%を転嫁するのはもちろん、そもそもどんぶり勘定になりがちな卸値です。
「いままでしていた割引、うちも厳しいので今後はなしで」と、実質値上げに踏み切ることもあるでしょう。(ウォーターベッド効果の第二段階)

そして、同様のことは、卸業者に出入りしているサービス業者にも影響があることでしょう。
結局、まわりまわって、あなたの取引先にも少なくとも影響が出て、
つまり、あなたのビジネスにも影響が出るということです。

ではどうするか?

続きます。

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