「売り難さ」を解消するカギ7

今日は、サービス業が顧客を失う理由です。

新規顧客を獲得するコストは、既存顧客を維持するコストの5倍かかる、といわれています。

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無形財の生産において、ほとんど顧みてこられなかったのが、産業革命の生みの親である「経営合理性」という点だ。このために、無形財の質に対する信頼性は予想以上に低く、コストは本来あるべき水準より高く、したがって顧客満足度は望ましい水準より下がってしまう。

私は、この点で大きな進歩がみられたことを指摘した。すなわち、無形財を提供する場合、顧客を長期に失わないために、特に注意を払うべき、一つの製品特性があるのだ。それは無形財ならではのもので、顧客は良質なサービスを受けているとほとんど意識しない、ということだ。契約期間中、休みなくサービスを受けている-すなわち、買ったり、使用したり、消費したりすることが恒常化している無形財の場合、とりわけ当てはまる。たとえば、ある種の銀行サービス、清掃サービス、運送業、電力会社、メンテナンス・サービス、電話などがそれである。

銀行との海外取引、保険契約、専門業者との清掃取引を考えてみるとよい。売り手と買い手の関係が良好な場合、買い手は自分が受けているサービスがよいとか悪いとかあまり意識しないはずだ。そうではない場合だけ(売り手のライバル会社が買い手にそう告げることもある)、買い手はその無形財の存在に気付く。信用状が間違って発行された、別の銀行からいま以上のサービスが申し込まれた、年一回の保険料の通知がまた来た、保険料の支払いを渋られた、清掃済みのはずなのに灰皿が汚れたままだった、愛用していた筆立てがなくなっていた-こうした場合にだけ、サービスの質が意識に上る。

無形財について知っておかなければならない重要なことがある。顧客は得ているものが得られなくなるまで得ているものを知らない、ということだ。不備があったときだけ、顧客は購入したものの存在に気付く。不満が起こったときだけ、じっくりと考える。満足している限り、何も考えないし、何も話さない。無形財の存在は失われて初めて気付くのである。

つまりこれが危険なのである。顧客は満足している時、すなわち首尾よく事が進んでいる時ではなく、不満のある時、すなわち失態が生じた時しか、サービスを意識しないからだ。そこにライバルが甘言をもって攻め込んでくると、たちどころに負けてしまう。ライバルはこちらより有利な融資案を持ちかけ、より魅力的な保険プランを提案し、事務所の壁にかけられた額の上のホコリを発見し、ちょっとしたミスが目につくと、陰に大きなミスが隠されているなどと中傷する。

セオドア・レビット『無形性のマーケティング』
(1981年ハーバード・ビジネス・レビューより)

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いつの間にか顧客維持のハナシになっています。
歴史的な経営者や学者、マーケッターが口を揃えていうのは、顧客維持の重要性です。

・ひとりの顧客を維持する。
・ひとりの顧客を失い、その穴埋めのために、新しい顧客を獲得する。

結果は同じかもしれませんが、前述のとおり、新規顧客を獲得するコストは、
既存顧客を維持するコストの5倍かかる、といわれています。

いかに割に合わないかが分かることでしょう。

では、顧客を失わないためには、どうすればよいのか?

明日に続きます。

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