ヘンリー・フォードはマーケティング第一主義

いつの時代にも、市場を破壊するような起業家が現れるものです。

そういった起業家のアタマの中が覗ける内容です。

カモる側、カモられる側の思考の違いです。

―― 引用ここから ―――――――――

ヘンリー・フォードはマーケティング第一主義

大量生産が利益を生むという考え方は、経営計画や戦略の中に組み込まれてしかるべきである。だがそれは、顧客について真剣に考えた後のことである。この点こそ、ヘンリー・フォードの矛盾した行動から我々が学ぶべき教訓である。彼はある意味で、アメリカ史上、最も優れたマーケターであると同時に、最も非常識なマーケターだった。黒以外の色の車を販売しなかったという点では非常識だが、市場ニーズに適合した生産システムの設計をリードしたという点では優れている。

世間は決まってフォードを生産の天才としてほめるが、これは適切ではない。彼の本当の才能はマーケティングにあった。フォードの組み立てラインによってコストが切り下げられたので売価が下がり、五〇〇ドルの車が何百万台も売れたのだ、と言われている。しかし事実は、フォードが一台五〇〇ドルの車なら何百万台も売れると考えたので、それを可能にする組立ラインを発明したのである。大量生産は、フォードの低価格の原因ではなく、結果なのだ。

フォードは繰り返しこの点を強調したが、生産中心主義の経営者たちは、彼の偉大な教訓に耳を貸そうとはしなかった。フォードがその経営哲学を簡潔に述べた文章を紹介しよう。

「当社のポリシーは、価格を引き下げ、事業を拡大し、製品を改良することである。価格の引き下げを第一に挙げたことに注意してほしい。当社は、コストが固定的だと考えたことはない。だから、さらに売り上げが増えると確信するところまで、まず価格を引き下げる。その後で、その価格で経営が成り立つよう懸命に努力している。当社はコストで頭を痛めることはない。新しい価格が決められると、それにつれてコストを下げるからである。

コストを積み上げて価格を決めるという通常の方法は、狭い意味では科学的かもしれないが、広い意味では科学的ではない。なぜなら、いくら詳細にコストを計算しても、それに基づいた価格では製品が売れないとしたら、そのコスト計算は何の役にも立たないからである。コスト計算はだれでもするし、当社ももちろん詳細にコスト計算をしている。重要なことは、コストがどうあるべきかについては、だれにもわからないという事実なのだ。

それを発見する一つの方法は……まず価格を低いところに決め、その価格で経営が成り立つよう、全員が最も効率よく働かざるをえないようにすることだ。低い価格を定めれば、だれもがその価格で利益を捻出しようと努力する。このように落ち込まれた状況のなかで、製造方法や販売方法について発見を重ねていくのであって、時間をかけてゆっくりと調査研究した結果ではない」

セオドア・レビット『マーケティング近視眼』
(1960年ハーバード・ビジネス・レビューより)

―― 引用ここまで ―――――――――

続きます。

\ 最新情報をチェック /