創造的破壊の重要性
4月からガソリンが二重に値上がりするとニュースになっていました。
では、みなさんがガソリン・スタンドでガソリンを買うとき
本当は何を買っているのでしょうか?
ミスター・ベネフィットが解説してくれています。
―― 引用ここから ―――――――――
創造的破壊の重要性
「言うはやすく、行うは難し」と言われるが、この考え方を突き詰めていくとどうなるかについて言及しておいたほうがよいだろう。まず第一の出発点--顧客から始めよう。消費者がガソリンを買う場合のわずらわしさや手間を嫌っていることは間違いない。人々は実際にはガソリンを買っているのではない。ガソリンを見ることも、味わうことも、手で触れることも、善し悪しを知ることも、現実に試してみることも出来ないからだ。
では、何を買っているのかというと、自分の車を運転しつづける権利を買っているのである。ガソリン・スタンドは、人々が自分の車を使用する代償として定期的に使用料を支払わされる徴税人のようなものである。つまり、ガソリン・スタンドはもともと嫌われ者なのである。なるべく嫌われないように振る舞ったり、不愉快感を減らしたりすることはできても、好かれたり愉快な場所になったりすることはない。
つまり、人気を挽回したければ、ガソリン・スタンドをなくすしかないということだ。例え徴税人の人柄がよくても、徴税人を好きな人など一人もいない。例え美少年アドニスや魅惑的なビーナスから買うとしても、ガソリンといった目に見えない製品を、運転を中断してまで買いたいとは思わない。したがって、頻繁に燃料補給する必要がない代替品の開発に努めている企業は、イライラした消費者たちが差し伸べた腕の中に飛び込めるのだ。これらの企業は必然的に成長の波に乗る。技術的により優れた、あるいはより高級な製品をつくりす出すからではなく、顧客の強いニーズを満足させようとするからだ。しかも、その新しい燃料は有毒な臭気もなければ空気汚染の心配もない。
石油会社が、顧客を満足させるには石油以外の動力システムが必要になるという論理を認めたとすると、消費効率の高い燃料(あるいは既存の燃料でも、消費者をイライラさせない給油方法)の開発に乗り出す以外の道がないことに気付くはずだ。かつて大規模食料品チェーン店がスーパーマーケット事業に参入し、真空管メーカーが半導体の製造に踏み切ったのと同じである。石油会社自体の将来のために、現在、高い利益を生んでいる資産を破壊しなければならなくなるだろう。いくら希望的観測によったところで、このような「創造的破壊」からは逃れられないだろう。
私がこの創造的破壊を強調するのは、経営者が旧来の考え方から抜け出す努力をしなければならないと考えるからである。現代は、一企業あるいは一産業が、みずからの事業目的をフル生産の経済効率だけに置いたり、危険極まりない製品中心主義に偏ったりしやすい。経営者自身の考え方が定まらないと、経営は、どうしても製品やサービスを生産することに向かってしまい、なかなか顧客に満足を与える方向には行かない。自社のセールスマンに向かって「製品を売りさばけ。そうでないと利益が出ないぞ」というほど底なしの泥沼に落ち込まないにしても、知らず知らずのうちに衰退の道を歩むことだろう。成長産業が次々とこの道をたどっていったのは、まさに自殺行為に等しい製品偏重主義に原因があったからだ。
セオドア・レビット『マーケティング近視眼』
(1960年ハーバード・ビジネス・レビューより)
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続きます。