マーケティング・マインドの浸透とリーダーシップ

これにて、『マーケティング近視眼』は完結です。

いわば、現代では当たり前なことなのかもしれません。
しかし、昔も、現代でも、
当たり前なことを、当たり前に行うことは、
なにより難しいことです。

あなたのビジネスは、
どこに向かおうとしているのでしょうか?

―― 引用ここから ―――――――――

マーケティング・マインドの浸透とリーダーシップ

企業がその存続に必要なことを実行するのは当然である。市場の要求に応え、しかも素早く対応しなければならない。単に存続することだけを願うのなら、それほど大志を抱く必要はない。路上生活者でさえ、何とかして生存できるものだ。堂々と生き続け、事業で成功を収めたいという衝動を持ち続けるには、成功という甘い香りに酔うのではなく、起業家の素晴らしさを心の底から実感することにある。

成功への情熱に駆り立てられた精力的なリーダーなくしては、どんな企業も優れた業績を上げることは出来ない。リーダーは数多くの熱狂的なフォロワー(追随者)を引きつけるだけの勇猛果敢なビジョンを掲げなければならない。ビジネスの世界で言えば、フォロワーとは顧客である。こうした顧客をつくり出すには、企業全体を顧客創造と顧客満足のための有機体であると見なさなければならない。経営者の使命は、製品の生産にあるのではなく、顧客を創造出来る価値を提供し、顧客満足を生み出すことにある。経営者はこの考え方(およびこれが意味し、要求するすべてのもの)を、組織の隅々まで継続的に広めていかなければならない。また、社員たちを興奮させ刺激させるような経営感覚も求められる。さもなければ、組織はバラバラな部分の集まりにすぎなくなり、一本化された目的意識や方向性が失われてしまうだろう。

つまり企業は、製品やサービスを生み出すためではなく、顧客の購買意欲を促し、その企業と取引したいと思わせるような活動をするためにある、と考えなければならないのである。またCEOはこうした環境、こうした態度、こうした願望をつくり出すために大きな責任を負っている。経営姿勢、進むべき方向、目標を設定しなければならない。そのためにはCEO自身がどこへ進みたいのかを正確にわかっていなければならないし、企業全体が進むべき目標を十分に理解するよう、努めなければならない。これこそがリーダーシップの第一条件である。自分の進む目標がわからなければ、道が無数にあるために迷路に入り込んでしまう。

どの道でも構わないのであれば、CEOはカバンをしまって魚釣りにでも出かければよい。もし企業が進むべき目標を知らず、それに無頓着ならば、わざわざ教えてやる必要もない。やがて誰もが、その誤りに気づくはずである。

セオドア・レビット『マーケティング近視眼』
(1960年ハーバード・ビジネス・レビューより)

―― 引用ここまで ―――――――――

 

以下、バックナンバーです。

マーケティング近視眼
事業衰退の原因は経営の失敗にある
忍び寄る陳腐化の影
成長産業など存在しない
人口増加という危うい神話
代替品が現れない製品はない
マーケティングは販売とは異なる
大手メーカーの大量生産至上主義
ヘンリー・フォードはマーケティング第一主義
製品偏重主義の罠
創造的破壊の重要性
R&Dに潜む危険な罠
マーケティングは「じゃま者扱い」されている
発想を逆転させなければならない
顧客中心の企業となるために
マーケティング・マインドの浸透とリーダーシップ

 

 

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