似通った結果になる理由
今回も、『購買意欲調査をめぐる狂想曲』という1960年の論文の続きです。
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似通った結果になる理由
消費者調査の進歩が著しいはずの業界や広告代理店が何度も、悲惨なまでに似通った広告を生み出してきた。
こう書かなくてはならないのは実にいらだたしいことだが、製品そのもの、包装や容器、販売促進までもがあきれるほど型にはまっている。
二〇世紀の旺盛な発明精神、消費者調査の英知、資本主義の活力などがこれほど輝きを放っているというのに、マーケティング分野ではイマジネーションがまったく働いていないというのは、何とも痛烈な皮肉である。
なぜだろうか。
購買意欲調査をことのほか熱心に活用しようとする人々は、なぜこうも同じような方針ばかり選ぶのだろうか。
考慮に値しそうな理由として次の二つがある。
① 消費者調査が科学としての洗練さを極めたため、十分に訓練を積んだ複数の人材がそれぞれ独自に調査・研究を行うと、必ず同じ答えと提案にたどり着く。
三種類の液体クリーナーのブランド名、イメージ、容器がどれも同じ傾向に陥っているのも、これによって説明できる。
コンパクト・カーの社名の特徴や長さがみな共通しており、広告も大同小異なのも、メンソール・タバコが信じがたいほど緑一色の世界を生み出しているのも、このような理由からである。
② 考えられる理由の二つ目は、模倣である。
まずどこか一社が成功への方程式を見つけ出すと、他社は意識的かどうかは別にして、軒並みにそれに追従する。
実のところ、模倣はごく一般的に行われていて、ありふれたクイズ番組、陳腐な西部劇、ジャズをBGMにした私立探偵ものドラマ、あまたの大型特番など、流行のテレビ番組もたいていは模倣で成り立っている。
アパレルの新しいスタイルが、とりわけ女性の衣類分野で急速に受け入れられ、たちどころに廃れていくのも、模倣によって説明できる。
広告マンが融通の利かない企業と戦うといった一般受けするテーマを扱った書籍や、思春期の葛藤を描いた映画の流行もしかり。
タバコの広告コピーが、健康への影響やフィルターの説明などに力を注いだ後、皮肉にも味や香りをしきりにアピールするようになったのも、やはり同じ流れである。
セオドア・レビット『購買意欲調査をめぐる狂想曲』
(1960年ハーバード・ビジネス・レビューより)
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相変わらず、2014年でも、まったく遜色ない論文です。
続きます。