リバース・エンジニアリングの基準を確立すべき

模倣戦略について、引き続きレビット博士に学びます。

模倣戦略といえば、いまの時代では、やはりサムスン電子でしょうか。
サムスンは一切のイノベーションを放棄して、キャッチアップ(模倣)に全力を挙げているとか。
(確か、吉川良三先生が講演でそのようなことを話していました)

―― 引用ここから ―――――――――

『リバース・エンジニアリングの基準を確立すべき』

一企業内でのイノベーションには限界があると認識した時点で、存続と成長のために企業は競って模倣に走る。いまや競争環境の圧力に押され、規模や経営、あるいは資金力の面で最良、最大の起業といえども、模倣に関わらざるを得ないばかりか、戦略として入念に検討し、それを実践しなければならない。

つまり、製品やプロセスに関する限り、リバース・エンジニアリングに積極的に取り組み、競合他社が創り出したイノベーティブな製品に匹敵する自社独自の模倣品をつくるよう努力しなければならないのだ。さらに、分野を問わず、真の意味での新製品が発表されるスピードが速ければ速いほど、競合他社にとっては明確な模倣戦略 ――事業判断ばかりでなく、リバース・エンジニアリングに当たって何をすべきかを決めるための指針-- の展開がますます緊急課題となる。

どの業界も競争が激しく、存続と成長が急務である以上、各社ともイノベーターの新製品をいち早く模倣する。企業が手にできるマージンは、模倣のスピードが増すにつれて小さくなる傾向にある。それゆえ、模倣者は迅速に市場参入することが極めて重要である。しかし、強力なR&D部門を有する新製品志向の強い企業 ――アイデア段階から製品発表まで通常1~3年かけている企業―― を対象に筆者が実施した調査によると、競合他社のイノベーションへの対応策を、非公式あるいはそれとなくでも示している企業は一社としてなかった。

リバース・エンジニアリングに取り組む上で、何らかの基準を設けておくのが有益である、と考えられるようになってきている。にもかかわらず、調査企業のうち、体系的あるいは一貫性のある考えを持っていたところは一社としてなかった。この事実は、以下に挙げる調査の結果からしても意外だった。

・これらの企業はいずれも、何からの正式な新製品企画プロセスを持っていた。
・いずれの企業も、最近のある時点において、模倣製品の発売が遅れたために、かなりの利益機会を失っていた。

換言すれば、イノベーションを企てるに当たって細心の注意を払う一方、より重要な模倣に関する基準は一切設けていないのである。リバース・エンジニアリングは計画されてもいなければ、重要視もされていなかった。単に発生したに過ぎないのである。無作為に、時には競合他社が行ったことへの無計画な反応として実施されている。調査企業の事例では、模倣者はいずれも模倣のタイミングが早すぎたか、遅すぎたゆえに大きなつけを払わされている。特に後者のケースが多い。

遅きに失した模倣の多くが、もしも一年早く発表されていたら巨額の利益に結実していただろう。さらに早い時期ならば高価格を設定して高マージンを稼ぐことも可能だっただろう。

セオドア・レビット『模倣戦略の優位性』
(1966年ハーバード・ビジネス・レビューより)

―― 引用ここまで ―――――――――

ではまた。

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