ローソンの「引き算戦略」から学ぶターゲッティングの盲点

どのような業種・業態でも構いません。
あるマーケティング戦略を立てようとする際に、
最も抵抗にあうのが“ターゲットを絞ること”です。

※ターゲットという言葉に馴染みがなければ、
「お客様」と読み替えてください。

ターゲットを絞る重要性は、そこそこ勉強をしたビジネスマンならば、
職責に関わらず、アタマでは理解しています。

・ターゲットをきっちり絞りましょう。
・絞ったターゲットに向けた商品・サービスを提供しましょう。
などなど。

ただ、実際に“ターゲットを絞れているか”と問われると、
ほとんどのビジネスが、ターゲットの絞りが甘いです。

わかってはいるけど、できない。

この背景にある問題は、次の公式を理解できていないため、
アクセルとブレーキを同時に踏んでいるような状態に
陥っているからです。

つまり、
「ターゲットを絞る」=「ターゲット以外を捨てる」
です。

「ターゲットを絞りましょう」
→「そりゃ、そうだ」

「では、ターゲット以外は捨てますよ」
→「そりゃ、ダメだ」

というワケです。

これでは、どれだけターゲットを絞ろうとしても、
最後の最後で絞りきれません。

あなたにも自覚症状はありますか?

と、この前提を頭の片隅におきつつ、
次の気になる記事を紹介したいと思います。

―― 引用ここから ―――――――――

独自スイーツブランド「UchiCaféSWEETS」など、女性目線の商品展開に力を入れているローソン。4月発売のフローズンドリンク「ウチカフェフラッペ」は2カ月間の累計販売数が400万個以上、昨年対比で6割増しと大ブレイクしている。

6月3日には、季節限定デザートシリーズ「UchicaféSWEETS 2014年夏コレクション」(計5品、各395円)を発売した。

~中略~

今回のコレクションの大きな特徴は、どのデザートも170キロカロリー以下に抑えている点だ。露出が高くなる季節に向け、「甘い物を食べたいがスタイルは維持したい」という、女性の“いいとこどり”願望に着目した。

また、スイーツの主役となるフルーツには三浦半島産味西瓜、夕張メロンなど、限られた産地でつくられる希少なものを使っている。フルーツを選ぶ際のこだわりは、素材そのものの甘み。たとえば、デザートとしては意外な感じがするトマトのスイーツにも、甘みの強いアメーラトマトという品種を使っている。「素材そのものの味を活かす“引き算”のおいしさ」(鈴木部長)を追求しているためだ。こうした工夫がローカロリーの、いわば「太らないデザート」を実現している。

そもそも、UchiCaféSWEETSはどのように生まれたのだろうか。

UchiCaféSWEETSの誕生は、2009年。コンビニ利用率の低い女性をターゲットとし、同業のコンビニではなく、デパートやパティスリーのお客を取り入れていくのが狙いだった。

「『なぜコンビニのスイーツは女性に売れないか』ということから出発した。男性がスイーツを買う際は基本的に『ついで買い』。質より量を選ぶし、気に入ったら同じものを求め続けるという嗜好傾向がある。魅力的なスイーツを開発するためには、女性ターゲットへとスイッチする必要があった」(鈴木部長)。

結果、ブランド立ち上げ後1年で、女性の利用率は約5%上昇、オリジナルスイーツの売り上げは年間平均で約6割伸長した。スイーツに使用する生クリームを抜本的に改革するなど、素材にこだわった商品を展開したほか、「いつでもおウチがカフェになる」をコンセプトに、商品づくりに「情緒性」を取り入れた。

つまり、女性がスイーツを購入する「動機」に着目したのだ。確かに、「今日は仕事で失敗したから、元気を出したい」「がんばったごほうびに甘いものを」などを理由にしてスイーツを購入する女性は多い。スイーツに、楽しさや驚き、癒しといった付加価値を求めるのだ。

そんな「情緒へのこだわり」を示す例が、スイーツの容器だ。お皿に移して食べることを想定し、ケーキなどを包むシートの四隅をつまみやすい形状・固さに成形。容器のままより、気に入りのおしゃれな器で食べたほうが、ちょっとした「非日常感」が演出できる。まさに、自宅がカフェになるわけだ。

また、1日23万個売れたという「厚焼きパンケーキ」では、メープルソースとホイップクリームを別添えし、自分で絞る形としたことがヒットの起爆剤となった。

ブランドの商品開発を支えるのは、市場調査・仕入れ部隊・女性の多い開発チームの三本柱だ。まず市場調査では、新しいものに対する感度の高い20〜30代女性を意識。原宿など街中で声を拾ったり、マスコミ等にも広くアンテナを張る。「潜在から顕在へと移行直前のニーズをすくいとるのがコツ」(鈴木部長)だという。またイタリア、ハワイなどスイーツの「本場」に出かけて味を研究することも多い。

東洋経済ONLINE
『太らないデザート、ローソンの「引き算戦略」 夏場の女性の心を鷲づかみ』

太らないデザート、ローソンの「引き算戦略」 夏場の女性の心を鷲づかみ | コンビニ | 東洋経済オンライン

独自スイーツブランド「UchiCaféSWEETS」など、女性目線の商品展開に力を入れているローソン。4月発売のフローズンドリンク「ウチカフェフラッペ」は2カ月間の累計販売数…

―― 引用ここまで ―――――――――

ターゲットを絞って上手くいった好例です。

「だから、ターゲットを絞れってことですね?」
と思われるかもしれませんが、
今日の主題はそこではありません。

ローソンのスイーツ企画を担当していた方、およびローソンが、
ターゲットを絞る阻害要因の壁を越えた、ということです。

・『なぜコンビニのスイーツは女性に売れないか』
・男性がスイーツを買う際は基本的に『ついで買い』
・質より量を選ぶし、気に入ったら同じものを求め続けるという嗜好傾向

この状況下で、女性にターゲットを絞ったスイーツを考えるワケです。
一般的には、次のような反論があるでしょう。

「なぜ、いま現在スイーツを買う習慣のできた、男性向けにもっと訴求しない?」
「女性向けなんかにして、既存男性客が他コンビニへ逃げたらどうするの?」
「他社は、そんなことやってる? リスク高すぎない?」

などなど。

少なくとも、担当者も責任者も決済者も、心によぎる疑問です。
恐らく、実際に、こういう抵抗はあったと思います。

そして、その声に押し切られていたならば、
「男性でも女性でも嬉しい、美味しいデザート」なんていう、
男性にも、女性にもウケない、
中途半端なスイーツが開発されていたことでしょう。

と、いうわけで、ターゲットを絞りきれないとき、
あなたが躊躇する壁は、誰の目の前にもあるものです。

「さて、いつもの壁がきたぞ」
と、思えれば、越える勇気も湧くものです。

ちなみに、このローソンの鈴木部長、
「女性がスイーツを購入する「動機」に着目したのだ」
「潜在から顕在へと移行直前のニーズをすくいとるのがコツ」
など、いいこと言っています。

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