サッカー日本代表から学ぶ、ポジティブ思考の甘い罠

残念ながら、今年のワールドカップでは
日本のグループリーグ敗退が決まりました。

監督や選手たちの意気消沈が伝えられていますし、
さぞかし無念なことかと思います。

不甲斐ないとの批判もありますが、その前提には、期待があったということです。
大会前の選手たちの意気込みや、周りの期待や煽りを鵜呑みにしていた方からすると、
日本が勝って当たり前だったハズなのに勝てなかった、と思ってしまうかもしれません。

とはいえ、そもそも日本がグループリーグで戦った
コートジボワール、ギリシャ、コロンビアは、格上の相手でした。

どれくらい格上かというと、FIFAランキングでは、
日本46位に対して、
1-2で敗れたコートジボワールは23位、
0-0で引き分けたギリシャは12位、
1-4で敗れたコロンビアは 8位です。

FIFAランキングよりも信ぴょう性が高いといわれるELOレーティングでは、
日本30位に対して、
1-2で敗れたコートジボワールは25位、
0-0で引き分けたギリシャは20位、
1-4で敗れたコロンビアは5位です。

これをみると、妥当な試合結果だったといえます。

日本を応援する立場では、勝利してほしいと願うものですし、
監督や選手も勝利するために頑張ったと思います。

しかし、対戦相手国の視点で考えれば、日本戦は明らかに“草刈場”です。
もし日本に負けていたら、母国からはかなりの非難を浴びたことでしょう。

日本が勝つことの方が番狂わせだった、日本は順当に敗退した、
というのは、ランキングからも明らかです。

「自分たちのサッカーができなかった」というコメントも聞こえてきますが、
たとえば、私がプロ棋士の先生と将棋で対局したならば、あっという間に負かされることでしょう。
そこで「自分の将棋ができなかった」とは言えません。
相手が格上だから、思い通りにさせてもらえないのです。

きちんと戦力差を捉えることができれば、
それに備えることができます。
対策が立てられます。
ナポレオン・ヒルがいう“的確な思考の力”です。

どこでも自分のやり方を通せるというほど強くはないのだとしたら、
ワールドカップの出場権を得るための地区予選の戦い方と、
ワールドカップに出てからの本戦の戦い方が、
同じで良いわけはありません。

ビジネスでいえば、地域に数店舗のビジネスと、
全国にフランチャイズ展開するビジネスが、
同じやり方で通用するとは考えません。

同様に、日本国内でビジネスしているメーカーも、
海外に展開していく際には日本流のやり方を変えます。
同じやり方で通用するとは考えません。

市場も違えば、競合も違うのですから。

ギリシャは、日本戦では退場者を出して数的不利になるや、
引き分け狙いで守りに徹しました。
そして、コートジボワールとの最終戦では、
試合終了間際に得点し、劇的に勝ち抜けました。

結果的に、順当にグループリーグを突破したギリシャですが、
その背景には、的確な戦況判断としたたかな試合運びがありました。

ポジティブに考えること自体は結構ですが、
希望的観測や憶測に基づく意思決定は危険です。

ビジネスでも、
「これは良い商品だ、売れるに違いない」
と、思ってしまうと、
高確率で待っているのは失敗です。

希望的観測に囚われて、的確に戦況判断が
できなくなります。

もちろん、感情的には「売りたい」わけですから、
その感情を抑えることはまず無理です。

ですから、テストマーケティングを早々に実施するといった、
希望的観測を早々に排除するような仕組みが必要なのです。

ネガティブに考えろ、とまでは言いませんが、

「これは画期的な商品だ、売れるに違いない」
「しかし、そういって惨敗した商品は星の数ほどある。であるなら、」
「これが本当に売れる商品なのか、ちょっとテストしてみよう」

くらいは、的確に思考するチカラは必要なのではないでしょうか?

サッカーで言うなら、
「勝てるに違いない自分たちのチカラ」が、本当に強豪国相手でも通じるのか、
本大会よりも前に確認しておくべきでしょう。
テストマッチをするという制度や文化があるわけですから。

(強豪国とテストマッチができれば苦労しない、という事情があるのかもしれませんが、
 それをするのが、協会などの裏方の仕事なのではないでしょうか)

本大会で強豪に敗れてはじめて「自分たちのサッカーができませんでした」というのは、
テストマーケティングをしないで商品売り出して「なんで売れないんだ」というのと、
同じに手抜きの問題があるように聞こえます。

ともあれ、監督、選手、スタッフの皆さま、
日本のために戦っていただき、ありがとうございました。
心より労いを申し上げます。

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