見出しのチカラと、経営者の脇の甘さと
問題になっている中国の米国系食品加工会社「上海福喜食品」が
加工品に期限切れの鶏肉などを混ぜていた事件に関して、
こんな記事が出ました。
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上海福喜から鶏肉を仕入れていたファミリーマートの中山勇社長は23日、「私どもは信頼関係を裏切られた。国内ではお客様の信頼を裏切った」と陳謝した。東京都内で記者団に語った。
社長によると、ファミリーマートは仕入れ前、社員を現地工場に派遣し、安全管理体制を点検。発売前にも取引を仲介した伊藤忠商事が品質を確認した。社長は「かなり厳しくチェックした中で起きたのでショックは大きい」と述べる一方、「先方の原料のチェックまではしていない」ことも明らかにした。ファミリーマートは今月から販売している「ガーリックナゲット」「ポップコーンチキン」用の鶏肉を上海福喜から購入。問題が発覚した22日、販売をやめた。
日本マクドナルドも「チキンマックナゲット」の2割を上海福喜から仕入れていたため、同社製のナゲットの販売を21日から中止。タイや中国の別工場などの材料に切り替えた。【神崎修一】
毎日新聞『期限切れ肉:「原料チェックしていない」…ファミマ社長』
http://mainichi.jp/select/news/20140723k0000e040222000c.html
―― 引用ここまで ―――――――――
ファミマの社長が、取材会見をしたニュースです。
この記事を引用するとして、あなたならば、どのような見出しをつけるでしょうか?
普通に事実を伝えるならば、
“<期限切れ肉>「お客様の信頼を裏切った」…ファミマ社長陳謝”
と、なるはずです。
しかし、Yahooがこのニュース記事に対してつけた見出しは・・・
“ファミマ社長「裏切られた」”
“<期限切れ肉>「信頼関係を裏切られた」…ファミマ社長”
でした。
ネットユーザに「叩いてください」と云わんばかりです。
(そいういう狙いもあるのでしょう)
この見出しの違いによる、
ニュアンスの違い、受ける印象の違いに注目してください。
プロモーションを考える際などに、
商品への「光のあてかた」などという表現も使われますが、
要するに、どの点(利点)に着目するか、ということです。
たとえば“自転車”という商材の記事や広告を考えるならば、
・ガソリン代がかからない移動手段です。
・移動をしつつ運動ができます。
・運転免許を取得する必要がありません。
など、見出し(アピールポイント)によって印象は変わります。
ここまでは、いつも書いていることですので、
よろしいですよね。
では・・・
・あれも、これも、良いトコロがある。
・全部アピールしたいけど、それでは訴求力が落ちることは理解している。
・かといって、どのポイントを選べばいいのか、その選び方が分からない。
こういう悩みはないでしょうか?
もちろん、こういうことに絶対的な正解はないのですが、
今回のYahooのヤリクチは参考になります。
つまり「どの見出しが、最も、見る人の注意を引けるか?」です。
ファミマの例に戻りましょう。
“<期限切れ肉>「お客様の信頼を裏切った」…ファミマ社長謝罪”
これでは、「ふーん、そう」で、終わりです。
なんの驚きもありません。
対して・・
“ファミマ社長「裏切られた」”
こちらは、事件のニオイがして気になります。
こちらの見出しの方が、
それを見たヒトの注意を引きつけます。
ファミマの社長からしたら、
「揚げ足を取るような見出しをつけられた」と、
憤慨しているかもしれません。
しかし、見出しとして優れているのは
Yahooの方です。
まぁ、そもそも、こんな見出しをつけられてしまうのは、
経営者としての脇の甘さが招いた事態ですし。
ファミマ社長が、「裏切られた」といいたい気持ちはよくわかります。
そして、社長室で、部下や下請け業者相手に、
どんな言葉を使って怒鳴り散らすのは勝手です。
しかし、公の取材の場で、「私どもは信頼関係を裏切られた。
国内ではお客様の信頼を裏切った」と発言するのは戴けません。
「私どもは~中略~お客様の信頼を裏切った」で十分です。
だって、謝罪会見なのですから。
それ以外は余分ですし、その余分な発言に注目されて、
炎上の火種を作っているわけですから・・。
さて、話題をまたプロモーションのハナシに戻します。
我々は、同じミスを広告・コピー・営業トークの際にしてしまう恐れがあります。
それは、「自分が感情的にいいたいこと」を、つい言ってしまうことです。
たとえば、ファミマ社長の「裏切られた」という言葉を混ぜるのもそうですし、
たとえば、まさにこの記事がそうです。
見出しのハナシに終始すればよいものを、
途中から経営者の脇の甘さのハナシを始めるので、
結局、何の記事だかわからない、という事態を招いています。
まさに、私が、つい言いたいことを述べてしまったばかりに、
招いたミスです。
反省します。