ファミマ社長からスモールビジネスの強みを学ぶ
昨日の記事で、ファミマの社長は脇が甘いという余計な記事を書きましたが、
さっそく批判する記事が出ていました。
それをご紹介しつつ、今日はファミマの社長を擁護したいと思います。
まずは、批判記事から。
―― 引用ここから ―――――――――
中国の期限切れ鶏肉輸入問題が波紋を広げている。日本マクドナルドとファミリーマートは問題の「上海福喜食品」から輸入した鶏肉関連食品の販売を停止したが、ファミマの社長は「中国だから輸入しないということはない。信頼できるパートナーを見つける努力をする」と語っている。それで信頼を取り戻せるのだろうか。
~中略~
中国の食品汚染や不正問題は毒入りギョーザ事件に限らず、これまで偽粉ミルク事件や農薬入り冷凍インゲン問題などたびたび起こり、そのつど怒りを交えて報じられてきた。にもかかわらず、今回のような事件が繰り返して起きたのは、けっしてモラルの問題だけではない。腐敗した経営判断を許してしまう政府と経済社会の構造に根本的な理由がある。
「デタラメな経営をすれば、経営者はもちろん会社も従業員も生きていけない」、逆に「立派な経営をすれば、みんながハッピーになる」という市場経済と企業の原理原則がしっかり社会で共有されていない。だから、ひどい事件が何度も周期的に起きるのだ。
事件の後「中国の当局が飲食チェーン店を展開する2000社以上を検査する」と報じられた。だが、問題は飲食チェーン店なのか。そうではなく、飲食チェーン店に食品や食材を供給している食肉業者のほうではないのか。問題解明の出発点からして、どこかトンチンカンに思える。
この会社はマクドナルドやファミマと取引していたくらいだから業界大手のはずだが、にもかかわらず、堂々と不正行為を働いているのだから、もしかしたら当局のおめこぼしがあったかもしれない。背景に当局と後ろ暗い関係はなかったのかどうか。
さて、そこでファミマの「中国で信頼できるパートナーを探す」という社長発言である。私は「おいおい、何を言ってるんだ」と思う。
私を含めて多くの消費者は、これまでの経験から中国のデタラメ食品問題は「氷山の一角」と思っている。にもかかわらず、まだ懲りずに「中国で信頼できるパートナーを探す」というのは「残りの氷山から別のかけらを探すはめになる」とは思わないのだろうか。
なぜそうまでして、中国にこだわるのか。
タイなど東南アジア、あるいは日本国内ではダメなのか。中国の製品が安いからか。そうだとすれば、ファミマ社長の頭にあったのは「コスト」であり「消費者」ではなかった、という話である。
私はこんなデタラメ食品を売ってしまい、それでもまだ中国製食品を売るというなら「これは『中国製のガーリックナゲット』です」ときちんと表示してもらいたい、と思う。
私はこの原稿を書くために自宅近くのファミリーマートに出かけて、レジの前のケースの中にあるチキンなどナゲット類の表示を確かめてみた。問題のガーリックナゲットはもちろんなかったが、残りの食品に「中国製」とか「日本製」といった表示はなかった。
政府は08年の毒入りギョーザ事件を受けて、輸入加工食品の自主管理に関する指針(http://www.mhlw.go.jp/topics/yunyu/tp0130-1ah.html)を作った。この指針(ガイドライン)の対象は事実上、中国である。
指針によると、輸入者は契約時に工場を立ち入り検査するのはもちろん、原材料の受け入れ段階において「原材料毎に我が国の法に基づく規格基準を含む品質規格を定め、納入ロット毎にこれに適合するものであることの確認が行われていること」などと、細かく取り扱い方が確認事項として定められている(http://www.mhlw.go.jp/topics/yunyu/tp0130-1aj.html)。
だから、単に「だまされた」というのでは済まない。輸入業者として、マクドナルドやファミマは「納入ロット毎に日本の品質基準に合っていたかどうか」を検査しなければならないのだ。
現代ビジネス「中国期限切れ鶏肉問題」マックやファミマが「だまされた」では済まない3つのポイント
―― 引用ここまで ―――――――――
・・・ごもっともです。
この記事を書いたのは、長谷川幸洋さんというジャーナリストの方です。
“なぜそうまでして、中国にこだわるのか。
タイなど東南アジア、あるいは日本国内ではダメなのか。中国の製品が安いからか。そうだとすれば、ファミマ社長の頭にあったのは「コスト」であり「消費者」ではなかった、という話である。“
長谷川さんは、きっと知っていて理解していながら、
敢て書かなかったことがあると思うので、代わりに書いてみます。
そもそもの、ファミマ社長の発言は、
“今後の中国企業との取引に関し「中国だから輸入しないということはない。信頼できるパートナーを見つける努力をする」”
ということでした。
この発言をしたファミマ社長の中山勇氏は、ファミマの主要株主である伊藤忠商事の方です。
伊藤忠商事で中国といえば、民主党政権時代に中国大使を務めた丹羽宇一郎氏(伊藤忠商事前社長)を思い出します。
その丹羽氏の過去の言動を振り返れば、ファミマ社長は口が裂けても「今後、金輪際、中国企業とは取引しない」と言えるはずがありません。
社長本人の思想信条はまったく関係ありません。
昨日は脇が甘いと書いて、その発言を撤回するつもりもありませんが、
それでもファミマ社長は優秀な経営者だと思います。
その中山社長が、今後の中国企業との取引に関して問われ、
「今後、適切に考えていきます。現時点での発言は控えさせていただきます」
と“懸命”答えることもできたでしょう。
しかし、そうではなくて、批判されるだろうことは承知の上で、
「中国だから輸入しないということはない」と回答したワケです。
批判の裏で、喝采するヒトもいたことでしょう。
組織人として、大会社のトップとして、
中山社長が守ろうとしたことが、こう考えると見えてくると思います。
“私どもは裏切られた”という発言も、
誰らをもって、“私ども”といっているのかまで、
きちんと考慮すると、別段、失言ではなく、
“台本通り”なのかもしれません。
会社も組織も大きくなれば、守らなければならないものは、
顧客や社員だけではなくなります。
そのあたりのことを全部呑みこんで、中山氏は、
トップとしての責務を果たそうとしたということです。
立派だと思います。
と、いうわけで。
我々スモールビジネスのオーナーには、
そのようなシガラミは一切ありません。
好き放題、取引先を選べますし、
好き放題、お客様の利益になるようなことを追求できますし、
好き放題、そうしながら自分たちの利益も追求できます。
大企業と比べて、“持たざる者の強み”がたくさんあります。
その“強み”を、容赦なく活用しましょう。