ザイアンス効果の正しい使い方
では、信頼について。
ことマーケティングやセールスで信頼というと、
よく取り上げられるのが単純接触効果(ザイアンス効果)です。
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単純接触効果(たんじゅんせっしょくこうか)は、繰り返し接すると好意度や印象が高まるという効果。1968年、アメリカの心理学者ロバート・ザイアンスが論文にまとめ知られるようになった。ザイアンスの単純接触効果、ザイアンスの法則とも呼ばれる。
何度も見たり、聞いたりすると、次第によい感情が起こるようになってくる。たとえば、よく会う人や、何度も聞いている音楽は、好きになっていく。これは、見たり聞いたりすることで作られる潜在記憶が、印象評価に誤って帰属されるという、知覚的流暢性誤帰属説で説明されている。また、潜在学習や概念形成といったはたらきもかかわっているとされる。
図形や、漢字、衣服、味やにおいなど、いろいろなものに対して起こる。広告の効果も、単純接触効果によるところが大きい。CMでの露出が多いほど単純接触効果が起きて、よい商品だと思ったり欲しくなったりするのである。
Wikipedia『単純接触効果』より
―― 引用ここまで ―――――――――
単純接触効果は、もちろん効果があります。
ただ、こういう心理トリガー的なテクニック、
(たとえばNLPのラポールを築くためのテクニック等)には、
共通していえる問題点があります。
それは、過信して万能だと思うことです。
もし単純接触効果が、無条件で万能であるならば、
ストーカーと呼ばれる犯罪者は、もれなく恋愛の達人です。
どこで仕入れたか、いまだに迷惑メールを大量に送りつけてくる
業者なども、マーケティングで大成功ということになります。
朝の通勤の満員電車の風景は、毎日見ていれば快適になってくる
というワケです。
もちろん、クレバーに、常識的に考えれば、
そんな単純なワケがないことは明らかです。
そこには、こうした“テクニック”を教える側のビジネスをする方が、
「このテクニックを習得した“だけ”で、うまくいくようになった」と、
華麗な成功談だけを並べるから、という背景もあります。
「テクニックを使ったが、セールスは上手くいかなかった」というケースは、
テクニックが上手く使えてなかったから、と語られます。
まさかまさか。
「テクニックを使って、そのテクニックは上手くいった。
しかしセールスは別要因で上手くいかなかった」
こんなことは日常茶飯事でしょうに。
テクニックは、あくまでテクニックです。
単純接触効果にしても、
たとえば3日間親切にしてもらった経験よりも、
1日間親切にしてもらった経験を3回の方が、
より親近感を感じるという比較の問題でしかありません。
もちろん“親切にしてもらった”というトコロが
最も肝心だし、根幹であるわけです。
では、そもそもビジネスにおける信頼とは、なにか?
ひとつ一番大きな解となるのは「約束」です。
相手へ抱かせてしまったこちらへの期待は「約束」です。
有形・無形を問わず、明文化されたかも関係ありません。
そのひとつひとつの「約束」が守られるから、
これから先の「約束」も守られるだろう、
これが信頼です。
ですから、もしここに単純接触効果のようなテクニックを
折り込むのだとしたら、
いきなり大きい約束1つして、その約束を果たして、
信頼をアピールするよりは、
小さい約束、待ち合わせ時間を守るとか、締切を守るとか、
関心を寄せるとか、相手に配慮するとか、
そういう小さな「相手にとって信頼に足る行為」を
積み重ねた方が効果的ですよ、
ということです。
続きます。