日本KFCが示した差別化戦略で大切なコト

ことの流れは、例の期限切れ肉問題なのですが、
「ケンタッキーフライドチキン」を展開する日本KFCが、
“真似できない”差別化を打ち出しました。

まず、前提として。

チキンといえば、コンビニエンスストアが提供する
高級チキンが話題になっていました。

昨年末の記事を引用します。

―― 引用ここから ―――――――――

冬のクリスマスシーズンを目前に控え、大手コンビニエンスストア・チェーン各社の高級フライドチキン販売をめぐる競争が熱を帯びてきた。

まず、大手コンビニの中でいち早く高級フライドチキン販売に乗り出したのがファミリーマート(ファミマ)だ。01年10月から店内にフライヤーを導入し、フライドチキンの販売を開始していたが、昨年「ファミマ史上最高のチキン」と謳う骨付きチキン「ファミマプレミアムチキン」(180円)を発売した。きっかけはお客からの要望だったという。

「お客様から『骨付きのフライドチキンが食べたい』という声があり、他店との差別化も考えていましたので、特別なフライドチキンをつくってみようということになったのです。そしてスパイスやハーブなど11種類を使い、身も特別な製法で骨からがはれやすく、衣も薄くして、パリッとした食感の出る味わいにしました」(ファミマ関係者)

「プレミアムチキン」は発売当初の売れ行きが計画の3倍となり製造が間に合わなくなったため、一時製造ラインがストップするほど好調な滑り出しだった。

その結果、11年度には1億8000万本だったファミマのフライドチキン系商品の販売数は、12年度には2億1000万本にもなったという。「現在も順調に売り上げを伸ばしている」(同)といい、クリスマスシーズンは数量限定の「プレミアムチキン(サイ)」(190円)や「クリスマスプレチキセット」を販売するなどし、前年の2割増しを見込んでいるという。

こうしたファミマの好調を受けてか、今年7月に高級チキン販売に名乗りを上げたのがミニストップ(10月末時点の店舗数:2224店)で、「極旨フライドチキン」(180円)を投入。その特徴について同社広報担当者は「12種類のハーブとスパイスを使い、肉自体にもみ込んだインパクトのある味わいで、お酒に合うテイストです。また、食べやすいようにチキンにも切り込みを入れています」と自信を覗かせる。

11月の同社のフライドチキン系商品は前年同月比1.5倍と、順調に売り上げを伸ばしている。クリスマス商戦に向けて「極旨フライドチキン」とクリスマス限定商品である辛口バージョンをセットにした箱入り4本セットの「Sセット・旨」(540円)や5本の「極旨フライドチキン」に辛口バージョン、Xフライドポテトをセットにした「Lセット・極」(900円)の2種類の専用商品を用意しクリスマスカタログに掲載するなど、売り上げ拡大を狙っている。

「予約の締切は12月18日なので、宣伝のため12月6〜12日の期間、『極旨フライドチキン』などを30円引きしています」(同社広報部)

●ローソンはヘルシー志向で新顧客層を開拓

そしてついに業界2位のローソン(9月末時点の店舗数:1万139店)も、10月29日から全国の店舗で12種類のスパイスとハーブを使用した高級フライドチキン「黄金チキン」を販売し、2日間で約100万食の販売数を突破した。「黄金チキン」はこれまでのチキンとは違い、肉離れがいいように低温スチームオーブンで通常の倍の時間をかけてじっくりと火を通している。しかも肉本来の食感を楽しめるよう繊維を壊さない独自製法を施し、衣は手作業で極限まで薄くし、肉の味わいや食感を重視。油もコレステロールゼロでビタミンEを配合したヘルシーオイルを使用している。そのため、「優しい口当たりで何本でも食べられると人気で、家族用に4〜5本まとめて買っていくお客様も少なくないです。また、夕方の購入者が増え、中でも30〜40代の女性が多いのも特徴です」(ローソン関係者)という。

ローソンは1979年にコンビニ業界ではいち早く店内調理を導入し、鳥むね肉を使った「からあげクン」をはじめ、もも肉を使った「Lチキ」「鶏から」など数々のフライドチキンを開発してきた。12年度の実績では「からあげクン」が年間約1億4000万食、「Lチキ」は同1億食、「鶏から」は同3500万食、合計で同2億8000万食を売り上げてきた。そして「黄金チキン」の年間売り上げ目標は3000万本となっている。

前出のローソン関係者によれば、この「黄金チキン」の販売目標達成は堅いようで、「発売開始から10日間ぐらいの間に1000万本を超えるという快挙です。当初は年内で3000万本を目標にしていましたが、このままではクリスマスまでには在庫がなくなってしまうため、急きょ調達しているところです」と笑みをこぼす。

コンビニ各社の参考基準はKFC

こうしたコンビニ業界で過熱する“高級フライドチキン戦争”の背景について、同業界関係者は次のように語る。

「ファミリーマート、ミニストップ、ローソンの3社ともに、フライドチキンの専門店である日本ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)を商品開発における参考基準にしているが、ただ方向性が全然違う。ファミマとミニストップはKFCにより近いものをつくりたいというところから、商品開発を行っているが、ファミマの『プレミアムチキン』よりもミニストップの『極旨フライドチキン』のほうが味のインパクトが強い。一方でローソンの『黄金チキン』はKFCの真逆で、インパクトの強い味よりも、いつでも食べたくなるようなやさしい味付けを志向している。肉も非常に柔らかくし、ノンカロリーの油を使用し、これまでフライドチキンをよく食べてきた人たち以外の層にも市場を拡大しようとしている」

こうしたコンビニ各社の動きについて、KFC広報担当者は「うちは国産の鶏を店舗で調理しながら粛々とやっていくだけです。特にコンビニの動きに対して意識はしていません」と静観の様子を見せている。

コンビニ各社、そしてKFCを巻き込んだ“高級フライドチキン戦争”の今後の行方について、外食チェーン関係者は次のような見方を示す。

「コンビニが専門店に近い味のチキンを提供し始めているといっても、まだまだ別物。KFCは国産鶏一羽を丸ごとさばいて9つのピースに分け、それを店内で味付けして調理している。一方コンビニの場合は、基本的にはもも肉だけであり、両者の提供するチキンの質には大きな差があります。ただ、KFCの店舗数は全国で1180。対する大手コンビニは1社で1万店を超える規模であり、カバーしている地域が全然違う。加えてKFCはすべて店内で店員が一つ一つ調理しているために、一日で提供できる数量は限られてしまう。コンビニがフライドチキンの分野で市場を拡大する余地は、まだあるといってもいいでしょう」

急激に販売数を拡大させるコンビニ各社と、追われる格好となったKFC。クリスマスに向け過熱する“高級フライドチキン戦争”の今後が気になるところである。
(文=松崎隆司/経済ジャーナリスト)

Business Journal『過熱するコンビニ“高級チキン戦争”の舞台裏~KFC意識し、各社独自製法で差別化図る』

http://biz-journal.jp/2013/12/post_3532.html

―― 引用ここから ―――――――――

“こうしたコンビニ各社の動きについて、KFC広報担当者は「うちは国産の鶏を店舗で調理しながら粛々とやっていくだけです。特にコンビニの動きに対して意識はしていません」と静観の様子を見せている。”

とはいえ、コンビニの歴史は、他業種からの消費の略奪の歴史でもあります。
たとえば、書店から雑誌の売上を奪い、スーパーマーケットから食料品の売り上げを奪い、
最近では喫茶店や自販機からコーヒーの売上を奪い、といった具合です。
もちろんKFC側も当然、危機意識をもっていたことでしょう。

そこにあの期限切れ肉問題です。
KFCにとっては、“追い風”です。

―― 引用ここから ―――――――――

日本KFCホールディングスが、運営している「ケンタッキーフライドチキン」の店舗で使用する鶏肉を全て国産にすることが18日、分かった。現在は期間限定商品の「レッドホットチキン」で米国産と国内産を併用しているが、販売を終了する9月以降は消費者の不安を考慮し、全て国産に切り替える

日本KFCは、主力商品「オリジナルチキン」ではこれまでも100%国産の鶏肉を使用している。今回、他の商品も国産にすることで「よりおいしく、安全、安心なチキンを提供できる」(広報)と説明している。

国産への切り替えにより、海外で加工したチキンを販売するコンビニとの差別化を図る狙いもある。日本KFCは国産化に向けて、鶏肉の調達先となる全国約200カ所の登録農場と調整を進めている。

時事通信『鶏肉、全て国産に=消費者不安へ対応-日本KFC』
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201408/2014081800580&g=eco

―― 引用ここから ―――――――――

“消費者の関心が食の安全にある”、さらに言えば、
“食の安全が、お客様の購買決定要因になる”、のであれば、
「(オリジナルチキンは)100%国産の鶏肉」というのと、
「すべて100%国産の鶏肉」というのとではアピール力が違います。

そして、競合他社が「うちも、100%国産の鶏肉です」と言えないのであれば、
これ以上の差別化アピールはありません。

もちろんKFC側からしたら、既存の取引先との関係に支えられてのことなので、
“ミニストップのソフトクリーム”と同様、展開規模が大きいコンビニゆえに、
全店展開するにはコストに見合った供給が追いつくハズもなく、
まず真似できないことは折り込んでいます。

「コンビニさん、真似できるものなら真似してみなさい」と余裕を見せている
ところでしょう。

とはいえ・・・

今現在「ケンタッキーフライドチキン」のWebサイトを見る限り、
・ケンタッキーのチキンは、安全で、安心です。
・100%国内産ハーブ鶏使用
・下ごしらえからお店で手づくり
と謳いながらも、

“オリジナルチキンは”という限定情報は、小さい文字でしか表示されていません。
これは、顧客視点に立って(ちょっと意地悪な言い方をすれば)、
「レッドホットチキンに米国産を使っているって偽装じゃないの?」
と突っ込まれると、やや痛いトコロです。

であれば、モンスターカスタマーにあれこれ言われるくらいならば、
「いっそ、全部、国産にしちゃえ」という判断なのかもしれませんね。

もうひとつ記事を紹介すると・・

―― 引用ここから ―――――――――

「ケンタッキーフライドチキン」を展開する日本KFCホールディングスは19日、店頭の「カーネル・サンダース像」を活用し、主力商品のオリジナルチキンが国産鶏であることをアピールすると発表した。日本マクドナルドでの中国産期限切れ鶏肉問題などを受けて食品・外食業界の食材信頼性が薄らぐなか、品質の高さと安全性を強調する

全1165店舗のうち、ショッピングセンター内など像のない店を除く約850店で実施。エプロン型の看板をかけ、当日販売するチキンの生産県を示す。

日本国内のKFCでは、季節商品「レッドホットチキン」の一部で米国産鶏肉を使っているほかすべて国産の鶏肉を使っているが、先月の問題発覚後には消費者からの問い合わせも相次いだ。

「販売の落ち込みはほとんどなかったが、国産使用が広く知られていなかった」(広報)として、シンボルであるカーネル像を使ったアピールを決めた。

産経新聞『KFCが「チキンは国産」と店頭で安全アピール カーネル像がエプロン姿で』
http://www.iza.ne.jp/kiji/economy/news/140819/ecn14081916140017-n1.html

―― 引用ここから ―――――――――

“国産使用が広く知られていなかった”

これは、重要なポイントです。

KFCは今回の騒動を受けて、
“先月の問題発覚後には消費者からの問い合わせも相次いだ”から
この事実に気づくことができた、と捉えることが出来ます。

つまり、どれだけ差別化できていたとしても、
それがお客様に伝わっていなければ、
差別化できていないも同然です。

これは表裏一体です。
競合がうまく伝えられていなければ、あなたに大チャンス・・。

ですから、あなたのビジネスの差別化要素、
そこまで言わなくてもウリやアピールポイントは、
きちんとお客様に伝えましょう。

もちろん、お客様に伝わる表現で。

競合が、きちんと伝えることができていなければ、
あなたは独自のウリや、独自のアピールポイントを
得たも同然です。

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