サービスに製造の発想を取り入れたマクドナルド
誤解がないように念のため。
このハナシは、1970年初頭のアメリカのマクドナルドについて書かれたものです。
そもそも現代日本のサービスレベルを前提においた常識では考えられないでしょうけれど、
無愛想でテキトーなサービス品質が当時のアメリカの常識です。
(洋画に出てくるお店をイメージしてみてください)
―― 引用ここから ―――――――――
サービスに製造の発想を取り入れたマクドナルド
経済のサービス部門を見渡しても、ファスト・フード・チェーン以外に、製造型思考が威力を発揮した例はほかにない。遠隔地に散らばった独立店の運営を、製造の方法を採用してこれほどうまく統制している例はない。これ以上素晴らしいサービスは、どこにも存在しない。
今日大成功を収めている新しいビジネスのなかでも、ハンバーガー・チェーンほど魅力的な事例はほかには見当たらない。マクドナルドは、本来はマーケティングの問題でもあるものに、製造と技術の威力を応用した優れた事例である。1961年から70年にかけて、マクドナルドの売上高は、5400万ドルから5億8700万ドルに拡大した。マクドナルドの成長の間に、低価格で早いというハンバーガーの代名詞だったホワイト・タワー・チェーンは、事実上姿を消してしまった。
マクドナルドがこれほど大成功を収めた原因は何だろう。単なる財務管理上のうまさだけではない。地元の起業家による経営だから、いわゆるサラリーマン経営者よりも事実に心を砕いているし、エネルギーも注いでいるということだけでもない。また、地理的な有利さだけでもない。つまり、それぞれの店舗は比較的狭い地域内に住む顧客をターゲットにしているから、店舗の数を簡単に、また迅速に増やしていける、ということだけでもない。大成功の真の原因を知るためには、マクドナルドの店がなぜあれほど判を押したように成功するのか、なぜ揃いも揃って常連客を集めるのか、という問題の核心を考えてみる必要がある。
もちろん地元の起業家による経営だということ、店の立地選択がよく練られていること、これも成功の要因のひとつには違いない。しかし最も重要なのは、各店舗の機能ひとつひとつの運営がコントロールされていることだ ― 均一で良質な料理の数々が、清潔で整然と秩序正しく、しかも、明るい笑顔にあふれた雰囲気のなかで手早く出されることだ。
人力に代わる機械設備を組織的に採用し、テクノロジーを慎重な計画の下に活用することで、マクドナルドは先行企業や追従企業も真似のできなかった勢いで人気を勝ち取り、それを定着させた。その方式がどんなに素晴らしいものか見てみよう。詳しく調べてみる値打ちが十分ある。
セオドア・レビット『サービス・マニュファクチャリング』
(1972年ハーバード・ビジネス・レビューより)
―― 引用ここまで ―――――――――
続きはまた来週。