客単価の上げ方を学ぶ(井村屋の肉まん、あんまん編)

『客単価をあげるなら、上位版を作れ』

この場で、何度かお伝えしていることですし、
この場以外でも、一般的なマーケティングを語るヒトならば、
同様のことは述べていると思います。

では、実際に上位版を作ろうとすると・・・、
それはそれで難しいのではないでしょうか?

実は、ここで重要になってくるのは、
“レギュラーとの違い”です。

もっと簡単にいうと、
“割高になる理由”です。

「普通郵便」と、「速達郵便」が好例です。

通常ハガキならば52円。
でも、速達にすると332円。

この280円の差額を請求する理由は、
お客様が“スピーディーに配達する”という
便益を得るからです。

もう一例あげると、「普通盛り」と「大盛り」です。
差額の理由は、“量”です。

では、この“割高になる理由”を、
明確に示せない場合はどのようにすれば
よいでしょうか?

例えば・・
「レギュラーよりも美味しい」とか、
「ホントは原材料高騰で値上げせざるを得ない」とか、
「人件費が値上がって、いままでより高コストの人材が作っているから」とか、
必ずしもポジティブではない理由も含めてです。

肉まん・あんまんの製造メーカー井村屋のアイデアはヒントになるかもしれません。

―― 引用ここから ―――――――――

秋の訪れとともに、店頭などでよく見かける中華まん。大手メーカーの井村屋(津市)が1日、発売50周年を記念して、生地や具材の食感を高めた新商品を発売した。過去の変わり種商品の人気投票をネット上で行い、1位のものを再発売するキャンペーンも始め、商戦の盛り上げをねらう。

東京・大手町のオフィス街。発売50周年の記念イベントで、井村屋の浅田剛夫会長は「長いご愛顧に感謝し、今後も喜んでもらえる肉まん、あんまんを提供したい」とあいさつした。

新発売の「ゴールド肉まん」は、もっちり感の残る生地やエビペーストの隠し味など、「50年間のノウハウをすべて詰め込んだ」という自信作。スーパーなどで売られる冷凍の2個入りは350円(税抜き)で、通常より2~3割高い。昼休みに無料配布コーナーに立ち寄った女性会社員(32)は「ジューシーで生地がもちもち。食べ応えがある」とほおばっていた。

朝日新聞『半世紀のノウハウ、肉まんにギュッ 井村屋が高級新商品』
http://www.asahi.com/articles/ASG914D41G91OIPE00M.html

―― 引用ここまで ―――――――――

もちろん、井村屋の製品開発担当の方の、たび重なる努力のたまもので
あることは間違いありません。

ただ、この「ゴールド肉まん」が、“通常より2~3割高い”理由、
つまり通常との違いや、割高になる理由は、消費者には厳密には測れません。

なぜなら、“質”という曖昧な差であるからです。
そして、その質の差が生み出す“美味いかどうかは”主観の問題です。

繰り返しますが、井村屋さん自身は、この質に拘って研鑽を重ねたことは
間違いないと思います。そこを否定する意図はありません。

実際に「二段発酵製法」とか技術的にも手間暇かけているようなのですが、
それを伝えても消費者にはよくわかりません。

とはいえ、“従来より美味いから”高値を付けますという
“伝え方”では、消費者は納得はしません。

加えて、プレミアム○○とか、リッチ○○という商品は、
世に溢れて消費者は慣れてしまっているので、
ただ、プレミアム肉まんとリリースするだけでは、
「お前もか」と思われてしまうだけです。

そこで井村屋が採用したコンセプトは、
「50年間のノウハウをすべて詰め込んだ」とか、
「美味しさを求め続けた50年の集大成」という、
ものでした。

ロジカルではないですが、有無をいわさぬ凄みがあります。

美味しさを求め続けた50年の集大成ってことは、つまり、
今年販売している通常の肉まんがその集大成なハズでは?
という意地悪なことをいう輩も、そうはいないでしょう。

ここで注意いただきたのが、
「井村屋は50年続いているから、そう言えるだけでしょ」
という発想をすると、そこで思考停止するということです。

もちろん実態として井村屋の社内では、
「よし、うちももうすぐ50周年だから、これを記念した新製品を投入しよう」
というような判断は間違いなくあったでしょう。

しかし、一番のアピールポイント、売り文句として、
“50年”を前面に出すか、出さないかは、別なハナシです。

むしろ、商品にまつわる様々な情報のなかから、
“使えるものは、なんでも使う”という発想をした、と解釈するのが、
少なくともあなた自身のビジネスのためです。

あなたのビジネスでの、上位版と、その訴求を考える助けになれば
幸いです。

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