コンビニ経営に学ぶ常識や定説を疑うことの重要性
以前、「DyDoに学ぶ常識や定説を疑うことの重要性」という記事で、
自動販売機業界では一等地だと固く信じられてきたは「左上」がウソだった
という記事をご紹介しました。
先日、私が担ったDMキャンペーンでも、予想とまったく逆の反応が出て
苦笑いしたことがありました。
予想というのは、つまりは、これまでの常識や定説からくる予想です。
ですが、現実の結果がすべてです。
これまでの常識や定説はそうだったかもしれない。
昨日までの顧客心理はそうだったかもしれない。
けれど、今日は昨日と同じではありません。
お客様の知識レベルや心理状態も常に変わっていきます。
DMに反応する理由、反応しない理由。
お客様が買う理由、買わない理由。
結局は、お客様がなにを思って、どうアクションしたか、
その仮説と検証が、明日と言わず未来のビジネスの成功を
支えていきます。
さて、少し前の記事ですが、あるコンビニでコミックの立ち読みを禁止にしたら、
(常識や定説からくる)予想に反して、売上が伸びたそうです。
―― 引用ここから ―――――――――
コンビニが立ち読みを黙認している理由が3つあるのは、業界では有名な話だろう。
1.ついでに買い物してくれるので売り上げになる
2.深夜時間帯の防犯対策になる
3.誰もいないより、誰かいたほうが顧客吸引となる
従来から言われてきたことだが、「本当に売上増につながっているのだろうか?」「本当に防犯に役立っているのだろうか?」などと、疑問に感じてきた。
24時間の観察は難しいので、自分がいる時間の立ち読み状況を見てみた。すると、30分以上立ち読みをしている人の本の購入率が低いことに気付く。前から少し気になっていたことだが、長い立ち読みが終わって「さぁ、レジに来るぞ」と待ち構えると、そのままお帰りになったり、「おいおい、コーヒー1本だけかぁ。タバコだけかぁ」と思えるコトが多かったのだ。
コンビニでは1時間を超えて立ち読みする人も珍しくないが、こちらとしては当然、長い時間立ち読みしているのだから、さぞかし売り上げに貢献してくれているのだろうと思っていたが、それは間違いであった。実は、5分ぐらい雑誌などをパラパラとめくっている人のほうが、売り上げに貢献してくれているのだ。
さらに観察を続けると、特にコミックを立ち読みしている場合が長時間となることが分かった。
■立ち読みを黙認すると防犯のレベルが下がる
では、防犯上の貢献度はどうなのだろう? これも、コミックの立ち読みがその万引きにつながっていることが判明。長時間コミックの陳列場所にいるので、従業員の目を盗みやすくなっているのだ。来るか来ないか分からない強盗への抑止力どころか、目の前の万引きを誘発していたのだった。
さすがにこれには参った。短時間の立ち読みは従来から言われてきたことに当てはまるが、長時間の立ち読みは店にとってマイナスでしかない。
そこで、長時間立ち読みの一因である、コミックの立ち読みを禁止してみることにした。
■立ち読みできないようにするには……
店内において、お客様に対する“禁止”事項は表示してない。“禁止”という文字はそれだけパワフルなのだ。例えば、◯◯“禁止”と書くのは、事故につながる可能性がある場合、他のお客様に迷惑が生じる場合だけで、店舗の都合による“禁止”というのは基本ありえないというのが長年接客業をしてきた筆者の信条である。よって、今回もPOPなどで、“立ち読み禁止”と書くことは最初に除外した。
“禁止”POPの掲出を避けるために、立ち読みができない環境にするしかなかった。
そこで考えられるのは、本屋などで実施しているシュリンクパック(コミックに巻いてあるセロハン状のモノ)を用いた方法だが、専用シュリンクパックは運用コストが高い。
立ち読み禁止にするのをあきらめかけたとき、ホームセンターで梱包用のラップを見つけた。これなら、運用コストを低く押さえられる。コミックに巻きつけるように梱包し、陳列。100%ではないが、こうしてコミックの立ち読み禁止を開始した。
■立ち読みを防ぐことで得られるメリット
当然ながら、コミックの売り上げが落ちるだろうと想定したが、長時間の立ち読みを防ぐことで得られるメリットを考えてみた。
・駐車場の回転率向上
筆者の店舗には、立ち読みをする人も車で来店する。長時間立ち読みする人が増えれば、狭い駐車場に車はあるが売り上げにならないという状況になる。特に昼間のピーク時間にやられると、最悪なのだ。
・コミックのロス削減
立ち読みのお客様が買い物をする利益高より、ロスが発生することのほうが店にとってはマイナスである。特に、本やタバコといった利益率の低い商品群でのロスは防がなくてはならない。
・オペレーション改善
いつ終わるか分からない立ち読みのお客様をレジ前で待っていることは、オペレーション上非効率的である。特に深夜の時間帯は、雑用にレジを離れることが多い。長時間立ち読みされると、このオペレーションが進まないのだ。
以上の3点を改善することを主たる目的として、コミックの売り上げ減少には目をつむることにした。
■予想に反し、コミックの売り上げが伸びた
ところが想定外のことが起きた。コミックの売り上げは、減少するどころか伸び始めたのだ。まだ、始めて4カ月なので早計だが、確かに売り上げが伸びている。
【コミック系の売り上げ前年同月比】
8月 140%
9月 160%
10月 120%
ざっくりとした数値だが、以上が直近推移である。ちなみに、禁止前の3カ月平均では前年比96%であった。
なぜだ? 2カ月過ぎたあたりから気になり出した売り上げ伸長。さらに観察すると、
・立ち読みできないから買う
「立ち読みで済むなら立ち読みしちゃおう」という人もいるようだ。数えるほどだが、コミック立ち読み常連の中で、読まずに買っていくのを何度か見た。
・「立ち読みされていない」から買う
これは意外であった。本屋などでは真っさらなモノが欲しいという人も多いだろうが、コンビニはもともと立ち読み前提である。真っさらであるとかは気にしない人が多いと考えていたが、どうやら間違っていたようだ。簡易的な包装ではあるが、それでも商品の信用度が上がったのだろう。
想像の域は出ないが、以上が売り上げ改善の理由だと考えている。
当初の目的である、コミックのロスは改善(棚卸の結果ほぼロスがない)。オペレーションの改善と回転率の向上は定量で測れていないが、多少の貢献はしているようだ。
「本来ならこういう実験検証は本部がやるべきだろ」と本部社員に言ってみたが、ヘラヘラしているだけだった。相変わらず役に立たない連中だ。
全国のコンビニオーナー、筆者と同様の悩みを持っていたら立ち読み禁止にしてみるのも一興だろう。ただし、売り上げの増減は保証しませんが……。(川乃もりや)
Business Media 誠『“立ち読み禁止”にしたら売り上げ伸びた』
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1311/14/news009.html
―― 引用ここまで ―――――――――
ではまた。