店主の意思を入れる余地のない店舗

週末のレビットアカデミー『サービス・マニュファクチャリング』です。
前回の『サービスに製造の発想を取り入れたマクドナルド』からの続きです。

繰り返しになりますが、ここで語られるマクドナルドは、
1970年初頭のアメリカのマクドナルドについて書かれたものです。

―― 引用ここから ―――――――――

店主の意思を入れる余地のない店舗

よくわかるものから始めよう。ここで調理されるハンバーガー・パテは、あらかじめ細心の注意を払って包装され、計量されている。したがって店主も従業員も、大きさ、味、固さについて自分達の好みに合せて自由に変えることができない。これは、ハンバーガーだけでなく、すべてのマクドナルドで出される料理に当てはまる。貯蔵庫、調理場、関連施設は、あらかじめ決められた製品ミックスにあうように設計され、余分な空間は少しもない。

このシステムのなかに入っていかなければ、いかならう食品も飲み物もサービスも提供出来ないように、余分なスペースは一切ない。サンドイッチ用の包丁さえもない。事実、包丁を置く場所がない。店主が、その店で販売できるものに関して自分の意思を入れる余地はない。これは契約上の決め事ではなく、設備上の制限からも不可能である。従業員も、調理法や料理提供などの接客において、自己流は通らない。

従業員の自由裁量は、秩序、標準化、品質の敵である。たとえば、車を組み立てる組み立てラインにおいて、行員に自由裁量や行動の自由裁量を許すとしたら、その人間の嗜好に沿った車をつくることになるだろう。どんな車が出来上がるか見当をつけることができなくなってしまう。車の設計や、組立ラインの構造や管理に十分な配慮がなされているからこそ、良質で低価格の、その生産台数から考えれば非常に信頼性の高い車が生産されるのだ。マクドナルドの場合も、事情は同じである。高度に自動化され、統制された条件の下で食品が調理されている。

セオドア・レビット『サービス・マニュファクチャリング』
(1972年ハーバード・ビジネス・レビューより)

―― 引用ここまで ―――――――――

レビット博士の論文に反するような情報になりますが、公正のために。
こういうシステム化が進むと新しいことが起こり難いのでは、と疑問になるかもしれません。

ところが、マクドナルドの看板商品で全店展開されているビッグ・マックの開発秘話では、
このビッグ・マックはテスト発売当初、創業者レイ・クロックの猛反対を押し切り、
現場が勝手に作って売った非公式なハンバーガーだったそうです。

動く者は、抑え込んでも動くということです。

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