フレンチ・フライド・ポテトのオートメーション
1970年代、アメリカのマクドナルドが取り入れていた、
サービス平準化のための工夫です。
ひとつの優れた工夫が、一石二鳥を超えて、
一石で三鳥、四鳥と多重にメリットを得ることを
示してくれています。
―― 引用ここから ―――――――――
フレンチ・フライド・ポテトのオートメーション
マクドナルドのフライ鍋は、一度に大量のポテトを揚がれるほど大きなものではない(大量に揚げ過ぎるとポテトの形が崩れてしまう)。また、たびたび少量を揚げて料理コストが高くなるほど小さくもない。揚がったポテトは、サービス・カウンターに接した広く平たい受け皿に移される。この受け皿の位置が決めてである。
マクドナルドの秘訣は、フレンチ・フライド・ポテトを少しだけこぼれ落ちそうに盛って、たっぷりの中身と気前のよさを印象付けようとするところにある。サービス・カウンターに接した場所に受け皿を置くことによって、盛りすぎてこぼれたフライが床に落ちなくなる。もし床に落ちると、足下がすべる危険だけでなく、汚れても見える。それは従業員を不潔な環境に慣れさせてしまうことにも繋がる。見せが少しでも不潔になると、清掃基準のモラールは急速に低下し、店は汚くなり、料理ももずそうに見えるようになる。
マクドナルドの狙いが、「たっぷり」という印象をもたせることにあるとはいっても、あまりたっぷり盛りすぎると、毎年膨大な量のポテトを購入している同社にとっては、ばかにならないコスト増になる。計画量よりも一袋当たり半オンスずつ余計に盛られると、会社の年間利益に目に見える影響を与える。さらに、従業員ごとの袋入れ作業に要する余分な労働時間を考えると、それが積もり積もって、カウンターでのサービスに支障を来たしかねない。
そこで、マクドナルドは、取っ手の中が狭いジョウゴになっている特別の調理器具を開発した。カウンターに立つ従業員はその調理器具を手にすると、袋をはさんで壁に止めてあるクリップの中へ、取っ手の先を差し込む。取っ手には一枚だけ袋がかぶさる。続く動作で調理器具をポテトの中へ入れると、設計者が考えた通りの正確な量がすくい取られる。先を上に向けて引き上げると、ポテトは取っ手の中のジョウゴを通って袋の中へ入り、ポテトの重みで自動的に取っ手から袋に吐き出される。袋の底は平たく作られているから、しっかりとぐらつかずに安定する。これで万事うまくいく。従業員は手を汚すこともなく、床はいつも清潔で、乾燥しており、足下がすべるということもなく、中身の定量が守られる。なかでも優れているのは、来店客は見るからにたっぷりと盛られた袋を素早く手にできること、従業員はてきぱきして愛想がよいこと、全体的な印象が、他の店ではみられない親切なサービスと受け取られることである。
セオドア・レビット『サービス・マニュファクチャリング』
(1972年ハーバード・ビジネス・レビューより)
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サービスは、いつだって改善の余地を残しています。
人手不足も叫ばれていますし、店主は繁盛店ほどいつだって忙しいものです。
だからこそ、もっと早く・ラク・正確に出来る方法はないものか、
いつも気を配ってみることが重要です。
そうはいっても”日常業務”の改善事項は、日常ゆえに気付き難いものですが・・。