マクドナルドに競り勝った競合の正体
もうひとつ、ついでにマクドナルドへの批評記事をご紹介します。
記事の内容自体は賛否あるでしょうけれど、
重要な視点を指摘しています。
―― 引用ここから ―――――――――
ビッグマックを“ごちそう”だと思わなくなったのは、いつからだろう?
「デフレ時代の雄」も今は昔。マクドナルドが絶不調だ。長引く業績低迷から抜け出せないどころか、中国産期限切れ鶏肉問題などの不祥事によって、さらに客足は遠のいている。
データを見る限り、マックの状況は想像以上に深刻だ。
2004年に原田泳幸(えいこう)氏が社長に就任して以降、“原田マジック”なる経営手腕を発揮し、悪化する業績をV字回復させたものの、売上高は2008年をピークに再び下降線をたどる。
2011年から2期連続で純利益減となると、昨年8月にはサラ・カサノバ氏が社長就任。期間限定メニューなど新商品を次々と打ち出したが、いずれも不発。今年上半期純利益は前年同期比59%減の18億円。さらに一連の不祥事を受け、今年下半期の決算予想を取り消し「未定」と発表する異例の事態に……。
なぜ、マックはここまで苦戦を強いられているのか。フードアナリストの重盛高雄氏はこう語る。
「マクドナルドは8月の記者会見で、売上減の理由に『コンビニとの競争激化』などを挙げていましたが、根本的な問題は客が来店する価値を提供できていないところにあります。
2006年に100円マックを拡充して成功を収めたことで、付加価値を商品ではなく価格に置いてしまった。それが『安い価格の商品を出せば、放っておいても客は来る』という“上から目線”のマーケティングとなり、顧客離れにつながった大きな要因だと思います」
しかし、最近はマックも高価格帯の商品を投入している。今夏に期間限定で販売したクォーターパウンダーハバネロトマトも499円という価格だった。
「もはやデフレ時代ではないとはいえ、マックの単品にその価格帯が求められているとは思いません。プチ贅沢(ぜいたく)志向の流行に乗ろうとしているのはわかるんです。実際、セールスレポートを見ると、客単価は上がっている。でも、客数は伸びていない。
それはつまり、期待してくれるお客さんがいて、試しに新商品を買ってくれているけれど、その期待をことごとく裏切り続けてしまっている結果なのではないかと思いますね」(前出・重盛氏)
ちなみに、ほかのバーガーチェーンの状況はどうか。
「ここ数年の業績を見ると、モスバーガーは好調。ロッテリアやフレッシュネスバーガーは横ばいか微減という程度。マクドナルドのひとり負けという印象が強いですね」(重盛氏)
~中略~
「不調とはいえ、今すぐ経営がどうこうなるということはないでしょう。ただ、従来のマクドナルドファンは子供の頃からあの味に親しんでいて、大人になってからもマクドナルドに通う習慣が身に染みついています。でも、今の子供たちにはその刷り込みが不十分。近い将来、“放課後にマックでだべる高校生”という光景が消えるかもしれません」(新井氏)
そんな苦しい状況を打開する人材として、昨年8月に社長に就任したのがサラ・カサノバ氏。だが、評判は芳(かんば)しくない。
「これまで米マクドナルドは日本には独自経営で任せてきましたが、テコ入れとして、過去に日本で『チキンタツタ』をヒットさせたカサノバ氏を送り込んだのです。しかし、彼女は残念ながら日本のマーケットをわかっていない。
例えば先月、『ビッグマック』や『えびフィレオ』といった定番メニューのセット価格を期間限定で値下げしたんですが、これは元の価格に戻ったときに割高感が出てしまう最悪なキャンペーン。さらに期限切れ鶏肉問題が発覚してから約1週間後に会見するという対応の遅さや、謝罪をしないまま『ウチの商品は安全だ』と宣言するスタンスなどに批判の声が上がっています」(新井氏)
カサノバ氏は就任した1年前からファミリー路線回帰をうたっているが、これまでのところ、うまくはいっていない。マックの復活にはまだまだ時間がかかりそうだ。
(取材/昌谷大介、武松佑季[A4studio])
週プレNews『業績低迷のマクドナルドから放課後の高校生とスマイル0円が消えていく理由とは?』
http://wpb.shueisha.co.jp/2014/09/08/35505/
―― 引用ここまで ―――――――――
値上げしては高いと言われ、値下げしても叩かれると、
なにをやっても非難されるのは強者の常です。
ですので、記事はハナシ半分に理解するとしましょう。
さて、私なりに重要だと思ったのは、次の点です。
“根本的な問題は客が来店する価値を提供できていないところにあります”
“もはやデフレ時代ではないとはいえ、マックの単品にその価格帯が求められているとは思いません。”
“期待してくれるお客さんがいて、試しに新商品を買ってくれているけれど、その期待をことごとく裏切り続けてしまっている結果なのではないか”
2014年のいま現在、物価上昇の傾向にありますが、
それでも大きな流れで見た場合には、
“1円あたりで手に入る価値は上昇”しています。
どういうことかというと、例えば家電でみても、
品質向上や機能改善が行われていても
価格帯がその分上昇しているかといえば、
それほどでもありません。
インターネット回線も、インターネットで出来ることが増えて、
かつ回線速度も速くなっていますが、その利便性が向上した分だけ、
プロバイダー使用料が高くなっているワケではありません。
食品でいっても、より美味しく、安全に、健康に配慮したように、
改善が進められています。
ですから、原材料が高騰するなどコストが上昇したとしても、
その分を価格に転嫁することが難しいという状況が生まれます。
なぜならば、消費者心理としては、
“心の財布”で予算のやりくりをしていて、
そのキャパシティを超えると、
財布のひもは締まるからです。
例えば、コンビニコーヒーの台頭で
缶コーヒーが打撃を受けているという
ニュースがあります。
“130円出して、アレを手に入れるくらいならば、
100円で、コレを手に入れた方がよい”
これが打撃の背後にある顧客心理です。
飲料業界は100円を110円に値上げしても消費者は許容した、
120円も許容した、という経験から130円も許容すると
踏んだのかもしれませんが、当時と今とでは
“心の中で比較される代替の選択”=真の競合
が異なります。
野菜の高騰が伝えられていますが、
野菜の値上がりが許容されているのは、
必需品だから、というよりは、
“心の中で比較される代替の選択”よりも
それでも勝っているからです。
(他がもっと高いので・・)
マクドナルドは狙って客単価を上げて行きました。
それ自体が悪いことだとは思いません。
しかし、客単価を上げると、自然と競合も変わります。
繰り返しになりますが、「その金額を払うくらいなら・・」
という代替が増えるからです。
ですから、競合分析をする際に、
同業他社をみていると見誤ります。
お客様の心の中を読みましょう。