高齢社会とシニアマーケティングと経営戦略

今日は敬老の日です。
来るべき少子高齢化、なんて言っていたのも今は昔。
現代はすでに高齢社会です。

―― 引用ここから ―――――――――

「敬老の日」を前に総務省が14日発表した人口推計によると、平成26年の65歳以上の高齢者は前年に比べ111万人増の3296万人だった。総人口に占める割合は0・9ポイント増の25・9%で、ほぼ4人に1人の計算。人数、割合とも過去最高を更新した。

第1次ベビーブームの最終世代である昭和24年生まれの人が65歳に達したのが要因。75歳以上は12・5%の1590万人で、8人に1人の割合となった。

推計は22年の国勢調査を基に、その後の出生や死亡数を今月15日時点で反映させた。65歳以上の男性は1421万人で男性人口の23・0%、女性は1875万人で女性人口の28・7%を占めた。

産経新聞『65歳以上、最高の3296万人 「敬老の日」推計、総人口の26%』

http://www.iza.ne.jp/kiji/life/news/140914/lif14091421360018-n1.html

―― 引用ここまで ―――――――――

この先10年でどうなってしまうのでしょうか?
もちろん、人口統計と平均寿命の動きを見れば、かなり正確な予測はできますし、
そもそも自分で予測しなくても、専門家の予測結果が探せば見つかります。

あなたが今年カネ儲けをするだけならば、人口統計なんて気にしなくてよいですが、
10年後もビジネスを経営していたいのだとしたら、人口統計は必ず向き合わなければならない問題です。

さて、いま現在で総人口の4人に1人が65歳以上。
さらに、総人口の8人に1人が75歳以上です。

と、いうことは、算数が苦手な私でも、
総人口の8人に1人が65歳~74歳ということがわかります。

あなたは、このボリュームゾーンにタッチする商品・サービスを扱っていますか?

小さなパイでトップシェアを取るくらいならば、
大きなパイで僅かなシェアをかすめた方がよい、
ということはよくあります。

これから新規事業を立ち上げる(起業・創業含め)方は、
この事実を必ず踏まえたうえで、ターゲッティングを考慮する必要があるでしょう。
(もちろん、検討した結果、ターゲットにしない選択もアリです)

さて、この件に関してシニアマーケティングについては、
以前、結構詳しく取り上げていましたので改めて紹介します。

[超実践]ターゲット顧客の効果的な決め方
団塊・シニアマーケティングの落とし穴
団塊・シニアをターゲットにしたB2Bマーケティング
団塊・シニアをターゲットにしたB2Cマーケティング

さてさて、シニアマーケティングについては、今日、言いたいことは1つです。
このボリュームをターゲットにする際には、リスクを冒さないこと。
(リスクテイクしろという、いつもの私らしからぬ発言ですが・・)

なぜならば、高齢社会のマーケティングは日本が最先端の戦場となり、
そして、その失敗と反省の上に、他国の高齢社会のマーケティングが作られることで、
ほぼ完成形となるからです。

これは民俗学の権威の受け売りですが、日本(人)は新しいものを産み出すのが苦手です。
得意なのは、遅れをとったところから追いつくことと、
誰かが産み出したものを改善・進歩させることです。
少子高齢化を過ぎて、本当の高齢社会という世界でも前例のない事態に対して、
日本(人)は、おろおろして、まず正解を導きだすことはできないでしょう。

(いままでは、良くも悪くもアメリカの成功事例を仕入れていればなんとかなりましたが)

ですから、シニアマーケティングについては、感覚的にはそれほどでもないですが、
新薬開発レベルにリスクが高いと思って間違いありません。

そういうハイリスクなことは大企業に任せておいて、
スモールビジネスは大企業が舗装した道を行きましょう。

更に、この前提を踏まえて、決してシニアマーケティングを近視眼的にみないこと。
近視眼的を詳しくいうならば、ちょっと成功した事例があったとしても、
それが本当に成功したかどうかを判断するには、時間がかかるということです。

そういうことが分かった上で、外資はしたたかに先行投資をしてきています。

―― 引用ここから ―――――――――

外資企業が、少子高齢社会の日本市場を「宝の山」として注目している。大学や地方自治体と提携し、市場研究や実証実験を行う事例が相次ぐ。中国やシンガポールなどアジア諸国は今後、日本と同じく短期間で高齢社会へ移行するとみられており、「高齢化最先進国」の日本で健康・福祉分野のノウハウを学び、超高齢社会を迎えるこれらの国で商機を狙う。

■世界共通の問題解決

神戸市は今秋、高齢者の集いの場「介護予防カフェ」を始める。コーヒーを飲みながら、健康維持の情報や話し相手が得られる場を提供することで、高齢者の引きこもりや孤立を防ぐ。神戸市がカフェの運営主体を公募したところ、7、8月の説明会に約200人が集まった。年度内に100カ所を設置する目標だ。

このプロジェクトに全面的に協力するのが、スイスに本社を置く食品最大手、ネスレだ。全てのカフェに無償でコーヒーマシンを用意し、健康づくりに関する冊子や自社の健康補助食品、独自開発の健康プログラムを提供する。

ネスレはヘルスサイエンス部門で栄養補助食品のほか、アルツハイマーなど高齢化に伴う慢性疾患の診断や研究を手がけている。高齢社会のニーズを探りたいネスレと、「生涯現役」の高齢者を増やしたい神戸市の狙いが一致。両者は昨秋、元気な長寿社会の実現に向けた連携協定を締結した。

日本の健康・福祉分野におけるサービス水準は高い。ネスレが海外の医療関係者を招き、日本の病院で提供される食事を視察した際、嚥下(えんげ)困難な患者にも食べやすいよう配慮されたメニューを見た参加者から、「これほどまでにサービスの質が高いとは」と驚きの声が上がったという。

ネスレヘルスサイエンスカンパニーの中島昭広カンパニープレジデントは「日本は高齢化の課題先進国。寝たきりや認知症など、世界共通の高齢社会の問題解決をいち早く探ることができる」と指摘する。

米ゼネラル・エレクトリック(GE)医療部門の日本法人、GEヘルスケア・ジャパンは2年前から、携帯型医療機器を搭載した小型ドクターカーを国内の過疎地に提供している。医師不足地域での新たな医療モデルの構築が目的だ。過疎地域の医療ニーズと世界で応用可能な対応策を探る実証プロジェクトと位置づける。

同社の岡野克也取締役は「成熟市場の日本には新興国の勢いこそないが、高齢社会に挑むという成長のチャンスがある。グループ内における日本拠点の存在意義はここにある」と言い切る。

独シーメンスも日本に注目する。ヘルスケア部門の売上高で、日本は米国に次ぐ2番目の市場。シーメンス・ジャパンは、日本の病院の医師や研究者と連携し、100以上の共同研究プロジェクトを展開。臨床現場の声をいち早く事業に取り入れている。

同社の森秀顕常務執行役員は「高齢社会では身体への負担が少なく、国の医療費増大抑制につながる検査手法や機器の開発が必須。これは世界中の関心事項」と指摘する。

国内の人口減少と高齢化を見据えた海外市場の開拓は、日本企業の共通課題だ。一方で、外資は成熟した日本市場に新たな付加価値を見いだしている。

東京大学高齢社会総合研究機構は2011年、超高齢社会対策の産学連携ネットワークを設立し、47社の民間企業と共同研究を行っている。東大の秋山弘子特任教授は「世界で勝負するグローバル企業ほど日本の高齢社会研究に熱心だ」と話す。

同機構によると、日本は1970年に高齢化率が7%を超え「高齢化社会」となってから、わずか24年で高齢化率14%超の「高齢社会」に突入した。この推移にかかった時間はフランスで126年、スウェーデンで85年だった。

■新たな基幹産業期待

各国は、急激な高齢化に対応した日本の手法に注目している。外資企業が日本市場研究で狙うのもまさに、次なる高齢社会でのノウハウ展開だ。

秋山特任教授は「日本は高齢化の最高の実験場。日本企業にとっても高齢社会に向けた製品やサービス、システムを開発、輸出することが最大の武器になる」と指摘。高齢社会対策という新たな基幹産業が生まれる可能性があるとしている。(滝川麻衣子)

SankeiBiz『少子高齢社会は「宝の山」?日本で学ぶ外資企業』

http://www.iza.ne.jp/kiji/economy/news/140823/ecn14082315280015-n1.html

―― 引用ここまで ―――――――――

まさしく、“日本は高齢化の最高の実験場”です。

機会と脅威の板ばさみ。
これからの経営者の腕の見せ所でしょう。

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