工場外で製造された製品の効力
週末のレビットアカデミー『サービス・マニュファクチャリング』です。
前回の『ソフト・テクノロジーによるサービスの高品質化』からの続きです。
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工場外で製造された製品の効力
これまで述べてきた発想法は、サービス業だけではなく、製造業にも応用できる。コンピュータ・メーカーが、機会の設置やメインテナンス・サービス、デバッグのための机上チェック、ソフトウェア・プログラムやオペレーターの訓練などを、販売計画の一部分として提供するとしよう。そのメーカーは、「製品」は工場で作られたもの以上のものからなっているとはっきり認識しているのだ。工場の外で行われることは、製造された機器そのものに劣らず、顧客にとって重要である。劣らないどころか、これらのサービスがなければ販売はできない。
こうしたケースでよく発生する問題は、メーカーが顧客サービスを顧客の購入する製品の欠かすことのできない部分だと考えず、販売を伸ばすための末梢的なサービスだととらえることだ。顧客サービスが製品に不可欠なものだと認識され、その結果、ハードウェアの製造と同じように十分配慮されるとしたら、成果は驚くほど上がるだろう。例を挙げてみよう。
グリーティング・カード産業のメーカーのなかには、小売店用陳列ケースに品切れ補充のための再注文ツールを備え付けているところがある。このツールがあれば、メーカーの営業担当者は必要なくなり、デパートの売り場係や小売店主の方から発注してくれる。特製の色分けされたカードが飢えに飛び出て、在庫が減って品切れが間近いことを教えてくれる仕組みである。注文票と封筒もツールのなかに入っている。この方法が開発されるまでは、営業担当者が店を訪問して在庫を点検し、品物を整理して、注文書を書かなければならなかった。だから品切れはいつものことだった。
昔のやり方は「顧客サービスと販売」と呼ばれた。新しい方式にそんな名称もないし、おそらく、これが人間に代わるテクノロジーの代用だとは考えられなかっただろう。しかし、人間がときどき補うだけで、すべて効率よく自動的に作動する資本集約型のシステムが、ムダが多く信頼性の低い人間依存型のシステムにとって代わったのである。
もう少し複雑な例を挙げてみよう。A・O・スミス・カンパニーが、人間の作業をあらかじめ明確にし、画一化することで労力を節約する方法を導入した。同社の主力製品は、穀物貯蔵用サイロである。販売業者が地域ごとに販売し、据え付ける。メインテナンスや資金調達の面倒もみる。そのうで、穀物の収納、搬出、家畜飼料の自動混合を行う付属装置が多種多様なため、サイロの種類が膨大な数になる。地域ごとに販売業者兼建設業者が販売を担当するが、時間もかかり、熟練のいる仕事である。
広い地域に分散している販売業者を効果的に訓練することのみに頼るのをやめた。その代わりに、A・O・スミスは、カラフルで手の込んだ、差し替え可能な基本設計書を作った。販売業者はこれで、農家が求めるサイロと、そのコスト、必要資金の調達方法を決定できる。表は一目でわかるように、農場の規模、家畜の種類や頭数、家畜の目的(肉牛か乳牛か)別に細かく分かれている。サイロの大きさと効果を最大にするための装置の組み合わせが、たちどころに分かる。
このシステムは、非常に整っていて、利用もし易く理解もし易い。販売能力も向上するので、販売業者は我も我もと進んで利用するようになった。こうして、A・O・スミスは、ミルウォーキーにいるだけで、遠く離れた販売業者が行うセールス・プレゼンテーションを、事実上コントロールしている。コストのかかる営業担当者を送り出して販売業者を訓練することもなく、販売業者への世辞や接待、おそらくもめごともない。代わりに、販売業者が自分の利益のために利用したくなるような道具をばらまいている。
セオドア・レビット『サービス・マニュファクチャリング』
(1972年ハーバード・ビジネス・レビューより)
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言われてみれば、当たり前。
大企業では何十年も前から積極的に取り入れていることです。
ただ、中小零細のビジネスオーナーに出来ていますか? と問うと、
「そんな余裕はない」というのが本音ではないでしょうか?
標準化・システム化・昨日の続きならば動画化、といった
改善点は、探せば見つかるものです。