KFCに学ぶポジショニングを守るための戦い方

“チキンといえばケンタッキー”

この認識がどれほど有効なのかは、個人や地域にもよると思います。

ケンタッキーフライドチキンは、
少なくとも、日本のファストフードチェーンの中では、
唯一、チキン主力に据えていました。

他のハンバーガーチェーンや、ピザチェーンに比べた場合は、
フライドチキン店であることは、明確な差別化要素でした。
まさに “チキンといえばケンタッキー”です。

とはいえ、差別化の前提は“誰と比べて”です。

ケンタッキーが差別化できているのは、
他のファストフードチェーンと比べた場合のみです。

いま、ケンタッキーのターゲット客にあたる方は、
ケンタッキーとなにを比べているのでしょうか?

4月に就任したケンタッキーの近藤新社長は、
「チキンといえばケンタッキーという状況になっていない」
との認識を示したそうです。

―― 引用ここから ―――――――――

「今や過当競争。ボーダーレスの戦いが始まっている」――。日本KFCホールディングスの近藤正樹社長は10月23日に開いたクリスマス商戦の発表会で、足元の外食市場の動向についてこう述べた。

「ケンタッキー・フライドチキン」を展開する日本KFC(以下、ケンタッキー)は、今年で30年連続となるクリスマスキャンペーンに期間限定商品を発売する。店舗の売り上げが通常時の5~8倍に拡大するこのキャンペーンは、同社にとって最も重要な商戦期だ。昨年は5日間(12月21日~25日)で過去最高となる約66億円を売り上げた(昨年の直営店とフランチャイズ店の合計売上げは1076億円)。今年は事前予約に加えて、当日予約も受け付ける。同社としては初となるネット予約も始め、来年6月をメドに通常商品でも開始する予定だ。

■既存店の売り上げは堅調

今期の業績はネットのオーダーシステムの投資負担が重く、連結営業利益は前期比約12%減の16億円の見通し。上期(14年4月~9月)の直営既存店は前年同期比2.9%増で着地しており、通年でも連結売上高は増収が見込まれる。ただし、昨年度の上期が直営既存店8.4%減と不振だったことから、前年超えのハードルは決して高くはなかったともいえる。

危機感を強めている近藤社長が特に意識しているのがコンビニエンスストアだ。「コンビニは全国に5.3万店あるが、われわれは1160店と圧倒的な差がある。商品開発力も上がっており、集客力も凄い」と話す。

実際、12年にはファミリーマートが「ファミマプレミアムチキン」を発売。ケンタッキーのオリジナルチキンが1ピース240円なのに対し、ファミマは190円(発売当初は170円)という価格設定で値頃感を打ち出した。その結果、一時は品薄になるほどの人気商品となり、昨年度、ファミマのフライドチキン系商品の販売は前年比2割増の2.6億本に拡大した。

コンビニで扱う一般的な加工食品の場合、粗利率は3割程度だがチキンのようなカウンターで販売する商品は粗利率が5割程度と高い。ファミリーマートに続いて13年10月にはローソンが「黄金チキン」を発売するなど、利益商材としてコンビニ各社が注力している。チキンをめぐる顧客争奪戦は外食企業だけのものではなく、コンビニも交えた近藤社長の言う「ボーダレスな戦い」になっている。

そうした中、三菱商事で生活産業グループCEO補佐を務めた近藤氏が、持株会社制の移行にあわせてケンタッキーの社長に就いたのが今年4月。社長交代会見の場でも「チキンといえばケンタッキーという状況になっていない」との認識を示していた。

実際、社長就任後にさまざまな改革に着手した。その一つが予約機能の拡充を図った今回のクリスマスキャンペーンで、もう一つが商品開発の体制変更だ。近藤社長は「今まで商品開発は、どちらかというと受け身の感じがあった」と話す。従来、市場動向を把握した上で、それに適応する商品を作る流れだったが、これからは「おいしいと思われる商品を自ら作り発信していく」(同)と意気込む。

■ピザ屋の新業態店も拡大へ

今年9月からは、ケンタッキーとグループ会社の宅配ピザ専門店「ピザハット」の商品開発を近藤社長が直轄することになった。意思決定を迅速化や開発スピードのアップが狙いだ。ピザハットでは10月24日にイートインや持ち帰りに特化した新業態店「ピザハットExpress(エクスプレス)」を沖縄県うるま市でオープンさせた。当面は沖縄で店舗網を拡大する方針だが、将来的な全国展開も視野に入れている。

渡辺正夫前社長時代にもアルコールを提供する新業態店や、「鶏から亭」と銘打った同社初の持ち帰り専門店を展開したが、どれもテスト的な色合いが強く、在任期間中に本格的な出店拡大には至らなかった。渡辺前社長は今年1月の社長交代会見で、「より一層スピード感を持って業容拡大に取り組んでもらう」と語っていた。

社長直轄の商品開発体制で新商品が出てくるのはこれから。近藤社長が進める改革や新たな取り組みをどこまで本格展開につなげられるかが、今後を占う大きなポイントとなりそうだ。

東洋経済ONLINE『ケンタッキーに迫る敵、チキン戦争”冬の陣”』
http://toyokeizai.net/articles/-/51806

―― 引用ここまで ―――――――――

ケンタッキーについては、以前コチラで記事にしたことがありました。

日本KFCが示した差別化戦略で大切なコト

このとき引用した、昨年冬の記事では・・・
“こうしたコンビニ各社の動きについて、KFC広報担当者は「うちは国産の鶏を店舗で調理しながら粛々とやっていくだけです。特にコンビニの動きに対して意識はしていません」と静観の様子を見せている。”

とのことでしたが、
もはやそんな悠長なことは言っていられない、ということなのでしょう。

さて、この記事から学ぶにあたっては、
・うちはチキン業界じゃない
・うちは外食産業じゃない
・うちは大企業じゃない
とか、そういった考えがあると、それ以上は踏み込めません。

これは、絶対的なポジショニングを築いても、
それは容易に脅かされるという実例であり、
勝ち続けるためには、さらに攻めなければならない、
という事例です。

たとえば、税理士業界で喩えてみましょう。

あなたはベテラン税理士で、ある地域で“税理士といえばA先生”と
いわれるくらい、その地域で絶対的なポジショニングを築けていたとします。
銀行からも“A先生が顧問をしている会社の会計ならば安心”と
評価をうけるほど、圧倒的な地位を築いています。

ですが、時代は流れ、税理士報酬は自由化されて、
若くて活きのいい新人税理士でてきました。

「御社の経費削減を応援していますから、どこよりも安くやります!」
「確かに僕らは経験こそ少ないですが、その分、行動力と情熱だけは負けません!」
「顧問先を潰しておいて、自分たちだけ生き残ろうとする古い税理士が許せないんです!」

そんな口説き文句で、新規創業の法人は軒並みとられて、
既存の顧問先もじわじわ奪われていきます。

さて、「あんなのは、安かろう悪かろうだよ」と、
いつまで余裕で居られるでしょうか?

賢い経営者であるならば、“税理士といえばA先生”という状況になっていない、
とすぐさま手を打ち始めることでしょう。

ケンタッキーも、
すべて国産鶏で、さらに各店舗内で調理しているのはケンタッキーだけですから、
品質を謳えば、いまだに圧倒的にコンビニチキンよりも勝っています。
しかし、だからといって一般消費者が支持するのはケンタッキーとは限りません。

また、仮にあなたが、いま現在“追う立場”であっても、
関係ないと切り捨てるべきことではありません。

この記事を読んでいる時点で、あなたがかなり勉強熱心であることは、間違いないでしょう。
であれば、市場において優位を築いて“○○といえば(あなた)”と認識される可能性、
つまり、あなたが成功する可能性は高いと、私は踏んでいます。
そうしたら、そのあとは“追われる立場”です。

さて、ケンタッキーのマーケティング部隊はかなり優秀(なハズ)です。
その優秀なマーケティング部隊は、どのような戦略を立案してくるでしょうか?

もちろん、戦略自体は、外部から見えるワケではありません。
ですが、外部から見える戦術(つまりマーケティングミックスの4P)を見ていれば、
自ずと、どのような戦略を立てているのか推察することができます。
(なぜなら、戦略は戦術に従うからです)

今後、ケンタッキーの打ちだす戦略が、はたして成功するのか、失敗するのか。
どちらにしても、貴重な事例として目が離せません。

 

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