「売り難さ」を解消するカギ9

これまで数日間にわたり、レビット博士の言葉をひも解いてきました。
今日はその完結編です。
歴史的な伝説の経営者が口を揃えて言うことを、ズバリ述べています。

----- 引用ここから ------------------------------

無形財を有形にする方法

すべての製品に有形と無形の要素がある。このことは何度繰り返しても足りない。有形財を売る企業は、例外なく、有形財そのもの以上のことを顧客に約束している。実際、無形性の向上に並々ならぬ努力を払っており、有形の製品特性よりも多くのベネフィットに浴することができると、約束しているのだ。

コダックが写真フィルムの買い手に向けて繰り返し強調し、約束するのは、いつまでも思い出として残り、写真を見るたびに鮮明な記憶が甦るという喜びである。コダックは写真の色彩の鮮やかさについては、ほとんど語ることはない。コダックが売る商品とは、思い出の喜びであって、フィルムでもなければ、現像された写真でもない。

~中略~

顧客を獲得するうえで有形財の訴求力を高めるにはそれを「無形財化」しなければならない。そして無形財は「有形財化」されなければならない。レオナルド・L・ベリー教授の言う「証拠固め」が必要になるわけである。理想を言うと、系統的にルーチン化する-すなわち、工業化されなければならない。

たとえばホテルでは、飲み物用のグラスは真新しい紙袋またはフィルムで包み、トイレのシートには消毒済みの紙テープを巻き、トイレ用ティッシュの端は使い古しでないことを示すように三角形を外に出さなければならない。これらの心遣いは、無言ながらはっきりと「この部屋は、あなたが心地よくお使いくださるように念を入れて清掃されています」と語っている。何も語らなくとも、宿泊客にこのメッセージが伝わるのである。いずれにしても、言葉だけで顧客を納得させられないし、ホテルの従業員がそのつど、言葉で表したとしても、宿泊客はそれをうのみにしたりはしない。ホテルは、このような心遣いによって約束を有形化するだけでなく、サービスのデリバリーを工業化しているのである。

~中略~

無形財の顧客を維持するには、事がうまく運んでいる間に継続的な販売努力が必要である。まずい自体が起こった時に顧客を失わないためにもそれが必要だ。そして、継続販売をするには、作業が工業化されなければならない。顧客とのリレーションシップをうまく維持するには、有形財の場合よりも無形財の場合こそ、より入念でより継続的な配慮が必要である。これは有形無形を問わず大切なことは言うまでもないが-。新製品で、特に複雑な特性を持った有形財になると、それがいちだんと重要になる。このような場合、「顧客リレーションシップのマネジメント」は特殊な技術になる。これは、別のマーケティングのテーマである。

本稿で述べてきたことの重要性を突き詰めれば、こう言えるだろう。顧客はバランス・シート状の有形資産よりも貴重な資産である。バランス・シートの資産はたいてい金で購うことができるし、熱心な売り手はいくらでもいる。顧客はそうたやすく購入を決定したりしない。多くの熱心な売り手は、見込み客に多くの選択肢を売り込んでいるからだ。さらに、顧客は二重の意味で資産である。第一に、顧客は販売によって得られるお金の源泉だ。第二に、固定客を多く抱えることによって、銀行や投資家から多くの資金を集めることができる。資金は有形資産に転化できるものだ。

古い言い伝え、「売ってから物を言え」は、一つの真理を物語っている。最初の販売に成功した後も売り続けるには、無形財を有形財化し、そのベネフィットと売り手の存在を顧客に何度も伝えると同時に、そのプロセスを工業化すること以外に道はない。

セオドア・レビット『無形性のマーケティング』
(1981年ハーバード・ビジネス・レビューより)

----- 引用ここまで ------------------------------

“顧客はバランス・シート状の有形資産よりも貴重な資産である。”は、
まさに金言です。

「売り難さ」を解消するカギ、と題して、これまでお届けしてきました。

顧客の獲得のはなしから、顧客の維持のはなしへ及んだので、
分かり難かったかもしれませんが、
あなたなりのカギは見つかったでしょうか?

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