成長産業など存在しない
突然ですが、あなたは何屋さんでしょうか?
もし○○屋だ、と、まず“売り物”が出てきたら・・・
わたしは“(ターゲット)”の、
“(課題解決・目的)”の達成を、
○○などを通して支援する仕事、
と言い換えてみてください。
陳腐化を逃れるカギが見つかるかもしれません。
では、本日も引き続き、レビット博士の言葉を紐解きましょう。
―― 引用ここから ―――――――――
成長産業など存在しない
記憶とは忘れ去られやすいものだ。たとえば今日、エレクトロニクス産業と化学工業を救世主と確信して歓迎している人たちが、急成長しつつあるこれらの産業にも、やがて不吉の影が忍び寄るだろうと気付くことなどできるはずもない。
ある経営者などは -たいへん先見性に長けていたが- かつて近視眼にかかったことをすっかり忘れてしまっている。この経営者とは五〇年前に、ボストンに在住していた有名な百万長者である。彼は遺言状に「自分の全資産は永久に市電事業の株だけに投資すべし」と書いたがために、相続人たちを図らずも貧困に追いやってしまった。「市電は効率の良い都市交通機関であるから永久に莫大な需要がある」という死後公表された彼の言葉は、ガソリン・スタンドの給油係としてやっと生活を支えている彼の遺産相続人にとって、何の慰めにもならない。
ところが、私がトップ・マネジメントを対象にたまたま実施した調査では、その半数が「自分の財産をエレクトロニクス産業に永久に投資させるとしても、相続人が困ることはない」と考えていた。そこで私がボストンの百万長者が市電事業に投資させた例を挙げると、口を揃えて「それは別の話だ!」と言った。はたして別の話なのだろうか。基本的には同じではなかろうか。
実は成長産業といったものは存在しない、と私は確信する。成長のチャンスを創り出し、それに投資できるように組織を整え、適切に経営できる企業だけが成長できるのだ。何の努力もなしに、自動的に上昇していくエスカレーターに乗っていると思っている企業は、必ず下降期に突入する。すでに死滅したか、死滅しつつある成長産業の歴史を調べてみると、急激な拡大の後に思いがけない衰退が訪れるといった、思い違いの繰り返しである。なぜこの繰り返しが起こるのか。そこには四つの共通する条件がある。
①人口は拡大し、さらに人々は豊かになり続けるから、間違いなく今後も成長すると確信している。
②当産業の主要製品を脅かすような代替品はあるはずがないと確信している。
③大量生産こそ絶対だと信じ、生産量の増加に伴って、急速に限界コストが低下するという利点を過信している。
④製品は周到に管理された化学実験によって、どんどん品質が改良され、生産コストを低下させるという先入観がある。
これら四つの条件の一つひとつついて、詳しく検討してみたい。できるだけ要点を明確にするために、三つの産業 -石油、自動車、エレクトロニクス- なかでも、長い歴史を持ち、有為転変を繰り返してきた石油産業について、詳しく述べることにしよう。これら三つの産業は、評判も良く、慧眼の投資家たちの信頼も得ている。さらに経営者たちが、財務コントロールやR&D、管理者研修といった分野で進歩的な考え方を持っているとされる。もし、これらの産業でさえも陳腐化が忍び寄るとしたら、他の産業は言うまでもない。
セオドア・レビット『マーケティング近視眼』
(1960年ハーバード・ビジネス・レビューより)
―― 引用ここまで ―――――――――
どこで聞いたか忘れましたが、
「もし、地球が今日滅びるとしたら、
最後に聞こえてくるのは、
専門家たちの“そんなことはあり得ない”という言葉だ」
という言葉を思い出しました。
すべてのビジネス、すべてのオーナーに共通することを、
ひとつあげるとしたら、それは、
「自分のビジネス、自分のお客は、違う」という、
考えをお持ちのことだと思います。
ひとのビジネスは”同じだ”という。
でも、自分のビジネスは”違う”という。
例としては、「それはいいアイディアだ。
他所のビジネスならば有効だろう。
しかし、うちは事情が特殊で・・・」。
当然、その他所のひとに言わせれば、
その方のビジネスは”同じ”なわけですが・・・。
続きます。