「かじりかけリンゴ戦術」でリスクを最小化する
模倣戦略は、ひと昔前までは、”かっこ悪い”戦略だったかもしれませんが、
最近では、ZARAやH&Mなどの活躍で、普通に評価されているな、と思います。
やはり、パクリ戦略ではなく、ファスト戦略といったネーミングの妙もあるのでしょう。
―― 引用ここから ―――――――――
『「かじりかけリンゴ戦術」でリスクを最小化する』
新製品にリスクがつきものであることはだれもが知っている。予想される通り、成功よりも失敗の数が多い。この事実が、競争的模倣の大幅な遅れの原因になっている。模倣を志向する者はそばに控えて、「イノベーティブな製品の運命はいかに」と固唾を呑んで見守っている。売れ行き好調と判断できたこところでようやく行動に移る。もちろん、注意深く待つことはまっとうな事業戦略である。
以前、筆者は「かじりかけのリンゴ戦術」なるものに言及したことがある。この戦術では、熟慮の末、新製品の開発をいっさい試みないことに徹する。要するに、「成功するために、リンゴを最初にかじる必要はない。果汁たっぷりの2口目か3口目かで十分だ。ただし、果汁の涸れた10口目ではダメ」なのである。市場開拓は他人に任せる。そうすれば、たとえイノベーターの製品が腐ったリンゴだとしても、模倣者は何ら痛手を被らない。果汁たっぷりのおいしいリンゴならば早々に行動を起こし、早い段階で甘い汁をたっぷりいただく、という戦略だ。
ライバルが少なく、マージンも魅力的な「早い段階」というのがミソである。事業の立ち上げにまつわる問題も少なく、必要な資本もわずかで済み、製品を迅速にコピー出来る業界ならば、早い段階での模倣も容易である。アパレル産業などはその典型である。
しかし、立ち上げに問題が多く、必要な資本も大きく、長時間のリバース・エンジニアリングが必要となると、果汁たっぷりの2口目か3口目を口にするためにも数年の歳月と大きなリスクを覚悟しなければならない。また、実証済み製品の模倣だからといって、自動的にリスクが減るわけではない。単にリスクの性質が変わるだけである。
イノベーターの場合は、みずからの製品を受け入れてくれる市場があるかどうかというリスクに直面するが、模倣者の場合は、すでに多くの競合相手がひしめく市場にアクセスするリスクを負う。しばしば強引に値下げする競合がいると、なおさらである。他企業よりも大幅に計画期間を短縮できる模倣者が優位に立つことは言うまでもない。ライバルも少ないし、より高く安定した価格で販売でき、何事も有利に事業展開できる。
セオドア・レビット『模倣戦略の優位性』
(1966年ハーバード・ビジネス・レビューより)
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ではまた。