模倣者の損失防御策

週末のレビットアカデミーです。

レビット博士の意見を、とても簡略化させると、

・競合のイノベーションがヒットした際、いち早く模倣品を出せるよう準備をしろ。
・そのためには、ヒットするか不明でも、”保険”としてリバース・エンジニアリング費をかけろ。
・リバース・エンジニアリング費は、競合イノベーションの成功確率予測に応じて増額しろ。
 (リリースから年数が経つほど、成功確率は増えていく)

といったことを言っています。
 
これを、どう実践するか、業界業種によっては異なることと思いますが、
レビット博士がいつもいう知恵は「あらかじめ、基準を決めておきなさい」でしょう。

―― 引用ここから ―――――――――

成功確率予測に基づく対応投資額の算出

概して、新製品の命運については、この程度の確信しか持てないのである。最初から、あるいは初年度か二年度に、競合他社のイノベーションは絶対に失敗すると言い切れる人はいない。失敗か成功か、心の奥底でどちらかに現実的な判断を下しているのが普通である。この自信に欠ける態度を改め、まっとうなビジネスに向かわせることは可能であり、またそうすべきだと思う。

~中略~

ゼロ年度の時点で、新製品に対する模倣品開発に要するリバース・エンジニアリング費を概算する。

~中略~

いずれにせよ、戦略は明らかである。すなわち、危険を防ぐために競争感覚を養い、競合他社の新たな活動の成功に対抗して、まず保険をかけるのである。

この保険の額面金額と保険料は、リバース・エンジニアリングへの投資規模に表れる。これは、模倣品をいち早く市場にだすように想定したものである。時間の経過と共に、修正されるイノベーターの成功確率と模倣者の予測R&D費を反映させて、額面金額と保険料を毎年修正する。

模倣者の損失防御策

この保険プログラムを「模倣者の損失防御策」(kmitator’s hedge)と名付けよう。

~中略~

模倣者が損失防御策を講じるのはそう簡単ではない。目的が正しいからといってうまく機能するわけではなく、何らかの不足があると実行できない。さまざま問題を伴う場合が多く、時間を考慮することが極めて重要となるので、競合他社の動きをうかがいつつ、模倣品にからむ問題と投入時間をいかに最小限に抑えるか、あらゆる方法を考えるべきである。

理論的あるいは難解なことを言っているのではない。先進工業国の軍隊では、兵器の計画・開発にこの種のプログラムを用いるケースがとみに増えてきている。一瞬の節約が国を救う。ビジネスでも、一瞬が巨額の利益を手にするか否かを決める。リバース・エンジニアリングを早期に着手したにもかかわらず、製品が失敗に終わったとしよう。その損失は生産を始める前なら、慎重な企業が他のかたちの保険にかけた金に比べると、けっして無駄金にはならないだろう。

業界によっては新製品が発表される頻度は高いので、すべてに防御策を施すのでは金がかかり過ぎる場合がある。その一方で、すべての企業があらゆる製品機会に防御策を設けたいと思っているわけではない。それでも、保険料の支払いに追われる可能性はある。だからこそ、保険をかけるか否かを判断する基準を設定することが必要となる。

~後略~

セオドア・レビット『模倣戦略の優位性』
(1966年ハーバード・ビジネス・レビューより)

―― 引用ここまで ―――――――――

ではまた。

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