ジーユーの試着したまま外出可能な新サービスは差別化に繋がるか

ケーススタディとしては、わかりやすいかと思いますので、
今日は、ジ―ユー(GU)を取り上げてみたいと思います。

念のため、ジ―ユーを説明しておきますと、ユニクロを運営する
ファーストリテイリングの100%子会社です。
低価格がウリです。

―― 引用ここから ―――――――――

ファーストリテイリンググループで、低価格ファッションブランドを展開するジーユーは17日、東京・渋谷地区では初となる店舗を18日にオープンすると発表した。試着したまま店外に出て、他のアパレルショップの商品とのコーディネートを試すことができるサービスなど、新しい取り組みを導入する。

渋谷は、ファストファッションと呼ばれる低価格アパレルブランドでは、「ZARA」など、主要店舗はすでに出店しており、ジーユーは最後発になる。このため、新店舗「ジーユー渋谷パルコ店」では、渋谷で買い物をする若い女性の間で違うブランドの服でコーディネートをしたいというニーズが高いことから、試着しての店外外出を可能にして、差別化を図る。

利用者の氏名と電話番号は店で控えるが、特に身分証明書の照会はせず、その日の閉店までに返却、もしくは購入すればいいとしている。購入しない場合は、店内の展示用に活用し、他の客に販売しない。

6月末までの試験的なサービスだが、状況をみて、試験期間の延長や、他店舗での展開も進める方針だ。このほか、3000円以上の購入に対し、無料で自宅まで配送するサービスも試験導入する。

ジーユーは、ファストリが展開するカジュアルブランド「ユニクロ」の低価格ブランドとして展開してきた。郊外店が多く、大都市商業地域での出店は遅れていた。2011年にファストファッションブランドに転換し、ファッション性を高める展開を図っている。

SankeiBiz『ジーユー渋谷初進出 試着したまま外出可能 新サービスで差別化』
http://www.sankeibiz.jp/business/news/140618/bsc1406180500003-n1.htm

―― 引用ここまで ―――――――――

“渋谷で買い物をする若い女性の間で違うブランドの服でコーディネートをしたいというニーズが高いことから、試着しての店外外出を可能にして、差別化を図る”

ぱっと聞いた感じで、思い切ったことをしている感じがあります。

店舗側の都合で考えれば、

“利用者の氏名と電話番号は店で控えるが、特に身分証明書の照会はせず、その日の閉店までに返却、もしくは購入すればいいとしている。購入しない場合は、店内の展示用に活用し、他の客に販売しない”

ということなので、会計的にみれば、購入しない場合(盗難された場合)でも、
服自体の原価が損になるだけです。
そして、この損は、問題ないと踏んでいるのでしょう。
通販で返品されることを考えたら、実際にはまったく問題ないのかもしれません。
そもそも服飾業界は、Buy 2 Get 1 Free (2つ買ったら1つタダ)等の
プロモーションができるくらいの製造原価ですので。

さて、では、利用者側の都合で考えてみましょう。

差別化とは、「顧客が自社を選ぶ理由」になって、はじめて差別化です。

もっと身も蓋もなくいえば、
この「試着しての店外外出できる」ことが、
ジ―ユーで服を買う理由になりえるか? ということです。

「ジ―ユーで服を買ったのは、試着して店外外出できたから」
となるか。
あなたは、どう思いますか?

私の意見は、最後に書きます。

さて、続いて競合の視点で見てみれば、

この新サービスが当たったとしても「真似し難い」と思うでしょう。
なぜならば、“違うブランドの服でコーディネートをしたい”という
欲求を肯定することになるからです。

これは、メイン商品と付属商品の関係を、
消費者に印象づけてしまう両刃のサービスです。

たとえば、携帯電話本体と、携帯電話のアクセサリ商品は、主従が確定します。
携帯電話本体にあうことが前提で、アクセサリが選ばれます。
“店外外出”する=主に合わせる側は、アクセサリです。

ジ―ユーのサービスは、言いかえれば、
「他所の(格上な)ブランド様と、どうぞ合わせてください」
と言っているようなものです。
(そうは、決して言わないでしょうけれど)

このサービスの記事を読んで、”自爆テロ”な臭いを感じ取った方、
その正体はコレです。

試着で外出OKは、誰でも真似できそうではありますが、
一般的にはブランド棄損に繋がることを考慮すると、
低価格&最後発のジ―ユーだからこそできる戦略といえます。

さて、では、このプロモーションは効果があるのか?

私は効果アリだと思います。
試着して外出OKともなれば、ここまでしておいて返すのも申し訳ない
という返報性も働きますし、
そもそも低価格帯なので、金額面で購買に悩むという抵抗は少ないです。
となると、はじめから悪意を持っている客でない限り(正しくは客ではない)、
やっぱり買わない、とは言い難いと思います。

欲しい服(他所ブランド)がある。
あわせるものは手軽にGUで済ませたい。
ホントに合うかどうかが心配。

という、買い手側のリスクをかぶった、
見事なリスクリバーサルです。

6月末までの試験導入ということで、
いわばテストマーケティングなワケですが、
ニュース記事に取り上げられれば、宣伝効果も大したものです。

ご自身のビジネスを、差別化したい、と思われている方には、
ヒントになる事例だと思います。

ファーストリテイリングが後ろにいるからできた、とか
服飾だからできた、とか考えずに、
ジ―ユーの“勇気ある決断”をご自身のビジネスに
咀嚼し、改変し、自分のものにできないか、
是非、ご検討ください。

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