圏央道開通にみる、地の利の変化
先月6月28日に、圏央道(首都圏中央連絡自動車道)の相模原愛川IC~高尾山IC間の新区間が開通しました。
これにより、都心部や首都高を経由せずに、東名高速道路と中央自動車道(および関越自動車道)への乗り換えができるようになり、渋滞緩和の狙いもあります。
渋滞緩和については、早くも効果が出始めているようです。
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相模原愛川インターチェンジ(IC)-高尾山IC間が6月28日に開通した圏央道(さがみ縦貫道路)について、国土交通省関東地方整備局と中日本高速道路東京支社は今月9日、開通後1週間の交通量(速報)が1日当たり平均3万4千台だったと発表した。開通区間に並行して走る一般道の交通渋滞の緩和が期待される中で、国道16号の交通量は変化がなかったが、国道129号は減少した。
速報は、開通翌日の6月29日から7月5日までの7日間の開通区間の交通量の平均値。それによると、平均3万4千台は2011年10月の事業再評価での計画交通量(1日当たり約4万台)を下回った。しかし、同地方整備局相武国道事務所は「4万台は圏央道が全線開通した場合の予測で、東北道などとつながっていない中では計画交通量の8割以上に達している」としている。
これまで開通していた隣接区間の圏央厚木IC-相模原愛川IC間の交通量は、相模原区間の開通前が2万2400台だったのに対し、開通後は4万6600台と2倍以上に増えた。
圏央道に並行に走る国道129号(相模原市中央区、田名赤坂交差点)は、開通前の4万6700台から開通後に4万4千台と6%減った。一方、国道16号(同区、淵野辺交差点)は開通前後とも4万2300台と変化はなかった。
国道129号沿線の厚木市は「開通が渋滞解消に十分寄与しているのではないか」と話し、14年度中に海老名ジャンクション(JCT)-寒川北IC間が開通すれば、さらに圏央道の交通量が増え、一般道の渋滞緩和が進むとみて期待している。相模原市は「交通量の流れを見るには数カ月は必要」と今後の交通状況を見守る考えだ。
国道16号の交通量に変化がないことに、相武国道事務所は「開通から1週間と認知度が低く、まだ圏央道に流入する効果が出ていないが、継続調査で状況を見ていく」としている
神奈川新聞『国道129号の交通量減少 圏央道開通1週間』
http://www.kanaloco.jp/article/73596
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地元を走る相模原市民の肌感覚として・・
八王子ICに向かう一般道はひどく渋滞する印象がありましたが、
先週末に走った限りですが、拍子抜けするくらい空いていました。
一般の方と比べても、渋滞が我慢できない私からすると、
これはとても歓迎する事態です。
とはいえ、商業面でみると、
道路を走る自動車数に、影響を受けやすいビジネス、
たとえばガソリンスタンドなどのビジネスオーナーにとっては、
圏央道開通はネガティブニュースに思えることでしょう。
ここで重要な視点が2つあります。
1つは、人口統計や都市計画などのマクロ的な要素は、高い確度で先読みができる、ということです。
こと日本全体で考えれば、少子高齢化の流れがあります。
たとえば予備校・塾というビジネスで考えれば、
5年後、10年後の市場規模は読めるハズです。
(今年の8歳の人数≒10年後の18歳の人数)
地域ビジネスで考えれば、自分の商圏とする市区町村・地域の
人口統計がどのように動いているのか、大きな流れが読めるハズです。
例えば、30年前に流行ったベッドタウンがあったとします。
当時30歳で流入してきた世帯主は、30年後には60歳になりリタイアしはじめます。
いま若い世代が流入している地域では、間もなく出生数は増えるでしょう。
道路を通る自動車数が変化するように、大きな流れは読めます。
もう1つ重要な視点は、機会や脅威は多面的にみる必要がある、ということです。
たとえば、予備校・塾というビジネスにおいては、
少子化傾向という事実は、ネガティブな要素と捉えられます。
いわゆる、わたしが決して使わないSWOT分析でいう「脅威(T=threats)」です。
確かに、短絡的にレッテル貼りをして満足したいならば、
少子化=見込み客数現象=脅威です。
でも、これは本当に、本当でしょうか?
別な情報では少子化でも育児関連ビジネスは落ちていない、
むしろ伸びているという見向きもあります。
なぜなら子供の数が減った分、ひとりあたりにかけるオカネが増えているからです。
少子化=客単価増チャンス=機会とも言えるわけです。
さて、圏央道のハナシに戻して考えてみます。
目の前の道路を走る自動車数が減るとき/増えるとき、
ガソリンスタンドなどのビジネスオーナーは事象を多面的に読まなければなりません。
競争の面でみれば・・
自動車数が減る→競合も減る→競争は緩む
自動車数が増える→競合も増える→競争激化
などです。
機会は、見方を変えれば、脅威になります。
脅威は、見方を変えれば、機会になります。
そして、その機会と脅威に意味づけする前の
交通量減や少子化などの「ただの事象」は、
先読みが可能です。
先読みを先にできた分だけ、
それだけ準備ができるようになります。
至ってシンプルです。
道路が出来て、自動車数が減って、はじめて「最近自動車数がめっきり減って困った・・」
というのは遅すぎます。
それは、「まさか、こんなことになるとは・・」という事態ではなく、
「こうなることは、わかっていた」事態です。
その事態に対して、ちゃんと対策を立てて、準備をしておくのか、
そういう面倒くさいことは考えないようにするのか、
どちらを選ぶかは、ビジネスオーナーの自由です。
さて、あなたのビジネスに起こりつつある「ただの事象」は何でしょうか?
そして、その事象をどうしますか?