正しい対応が誤っていて、誤った対応が正しいとき

信頼に関係する記事の続きです。

先月から続く、期限切れ肉問題について、
いまいちど考えてみたいと思います。

―― 引用ここから ―――――――――

外食産業の「巨人」日本マクドナルドが、中国製鶏肉商品の販売をやめたことが波紋を呼んでいる。「チキンマックナゲット」を製造していた中国の「上海福喜食品」で、消費期限が切れた肉の使用が発覚し、安全性への不信感が高まったためだ。現時点で他社は「『中国イコール悪』ではない」(外食大手)などとして、追随する動きはほとんど見られない。しかし、消費者からの「中国外し」を求める圧力が強まる可能性も否定できず、各社は神経をとがらせている。

◇不安無視できず
「えっ、本当ですか」。ファミリーマート関係者は、マクドナルドの決定を聞いて驚きの声を上げた。上海福喜から調達した「ガーリックナゲット」などを販売してきた以上、強い対応を迫られるのは必至だからだ。マクドナルドが「中国外し」を決めた25日、中国の取引先に厳格な品質管理を求める方針を明らかにした。

マクドナルドも、最初から中国製の排除を決めていたわけではない。当初は、中国の別工場とタイに切り替える方針を打ち出していた。しかし、22~25日の4日間で消費者からの問い合わせが1430件に上り、「中国で作っていることが不安を呼び、信頼が傷つく事態を放置できない」(幹部)と、タイ製への一本化に踏み切った。

サラ・カサノバ社長は決定に当たり「お客さまに提供する食事、またブランドに対する信頼が何よりも大切」と強調した。問題が長引けば、原田泳幸前社長(現会長、ベネッセホールディングス会長兼社長)から託された経営再建への影響は避けられないため、中国外しで幕引きを図った形だ。

◇中国以外にもリスク
消費者の不安が高まっているのは事実だ。フライドチキンを中国から調達するモスバーガーにも、上海福喜の問題が明るみに出た後に「安全性は大丈夫か」といった問い合わせが寄せられた。マクドナルドの判断に対し、老舗外食企業の幹部は「お客さまの圧力が相当強かったのだろう」との見方を示した。

ただ、製造国を切り替えるだけで問題が解決するわけでもない。最近では、ベトナムから輸入した冷凍シシャモに毒性の強い薬剤などが混入。日本国内でも昨年末、アクリフーズ(現マルハニチロ)の冷凍食品から農薬が検出されるなど、食の安全を揺るがす事件は枚挙にいとまがない。

モスバーガーを運営するモスフードサービスの幹部は「タイでも同様の問題は起こり得る」と指摘し、同様の事態を防ぐには「チェック体制を強化するしかない」と話す。大手牛丼チェーンも「問題は国ではない。安全性をどう保証するかだ。中国からの調達を急にやめる必要はない」(広報)との立場。両社とも切り替えに否定的だ。

外食産業は消費者の低価格志向に応えるため、鶏肉加工品だけでなく多くの食材を中国に依存している。一方、マクドナルドが中国製を切ったのも「お客さまの声が多かった」(幹部)ことが決め手になった。各社は、安全と安さの両立という困難な課題に直面している。

◇期限切れ肉をめぐる動き
7月20日 中国・上海の「上海福喜食品」が消費期限切れの肉を使用と現地で報道
  21日 日本マクドナルドが上海福喜製の「チキンマックナゲット」を販売中止
  22日 ファミリーマートが上海福喜製の「ガーリックナゲット」など販売中止
  23日 ファミリーマートが上海福喜製品購入客への返金を開始
      中国当局が上海福喜食品の責任者ら5人を刑事拘束
  24日 香港政府が上海福喜製品の輸入を全面禁止
  25日 日本マクドナルドが中国製鶏肉商品の販売を中止

時事通信『消費者不安で「中国外し」=マック決定、他社は警戒』

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201407/2014072800543&g=cyr

―― 引用ここまで ―――――――――

この問題の解決を、社内の問題の解決として、
ロジックでごりごり解いていくと、どうやっても
「今後一切、中国との取引をやめる」とはなりません。

記事にもありますが、
・“現時点で他社は「『中国イコール悪』ではない」”
・“製造国を切り替えるだけで問題が解決するわけでもない。”
・“最近では、ベトナムから輸入した冷凍シシャモに毒性の強い薬剤などが混入。”

はたまた・・

・“日本国内でも昨年末、アクリフーズ(現マルハニチロ)の冷凍食品から農薬が検出”
・“「タイでも同様の問題は起こり得る」”
・“「問題は国ではない。安全性をどう保証するかだ。中国からの調達を急にやめる必要はない」”

すべて、ごもっともな意見です。

・“同様の事態を防ぐには「チェック体制を強化するしかない」”

確かに、そのとおりです。

ちょっとハナシは逸れますが、
ビジネスにおいて必要な機能は2つだけだといったのは、
かのピーター・ドラッカーです。
ドラッカーがいう2つの機能とは、マーケティングとイノベーションです。

とはいえ、この例に乗っかってみつつ、
今日は、ビジネスを次の2つの機能で考えてみましょう。
それは、「販売」と「納品」です。

「販売」とは、商品・サービスを売って売上に変えることです。
「納品」とは、商品・サービスを買ったお客様に実際にそのものを届けることです。

パン屋で喩えれば、パン作りの腕を磨く、小麦を仕入れる、パンを焼く・・、
これらの行為は、すべて「納品」の機能に属します。
アンパンマンの世界ならば、パンを待っている方の元に無償で配ればよく、
感謝の言葉がもらえてそれでハッピーになりますが、
現実のビジネスの世界では、パンをお客様に“買って”いただく必要があります。
この買っていただくための行為が、「販売」です。
どちらがより重要か、というハナシではなく、どちらも等しく重要です。

さて、期限切れ肉問題について、記事を振り返ってみましょう。
記事に出てきた、食品業界の言葉について「販売」と「納品」と、
どちらに寄った言葉かを判断してみましょう。
全部「納品」であることに気づくハズです。

はい。
つまり、「納品」する立場としては、
「今後一切、中国との取引をやめる」は
確かに最適解にはなりません。

しかし、「販売」する立場としては、
どうでしょう?

「うちの原材料は何を隠そう全部中国産です。
でもしっかりチェックしてますから安全です。
信じてください。トラストミー」

こう発言したところで、
果たして“買う決定権を持つ”お客様は、
どのように感じるでしょうか?

売り手の目線で、「『中国イコール悪』ではない」というのは勝手ですが、
お客様がもし『中国イコール悪』と信じていたら、
その信念が変わるまでは、そのお客様からは支持されることはありません。

では、『中国イコール悪』と信じるお客様がどれだけいるのでしょうか?
ここを読み切るのが経営判断になります。

ロイヤルホールディングスの菊地唯夫社長は、この問題をいちはやく重大であると認識し
次のような英断を行いました。

―― 引用ここから ―――――――――

「ロイヤルホスト」や「天丼てんや」などを展開するロイヤルホールディングスは31日、中国産の食材の使用を減らしていく方針を明らかにした。

上海の食品会社が保存期限を過ぎた鶏肉を扱っていた問題を受けた。

菊地唯夫社長は2014年6月中間連結決算の発表記者会見で、「消費者が不安を感じており、代替品を確保できることを条件に、中国産を縮小していく」と表明した。同社は、問題となった上海の会社と取引はないが、菊地社長は「人ごとではない」と述べた。

同社によると、グループ内の飲食店などで使用している中国産の原材料は、金額ベースで全体の約3%。インゲンやアサリなど冷凍の野菜や魚介類が中心で、使用している割合はロイヤルホストで0・6%、てんやで10%という。

読売新聞『ロイヤルホストなど「中国産食材縮小」HD社長』

http://www.yomiuri.co.jp/economy/20140731-OYT1T50136.html

―― 引用ここまで ―――――――――

さて、お客様の支持を得るのは、どちらでしょうか?

今日の重要な視点は「顧客の信じていること」です。
この信じていることは、実際の「正しさ」よりも優先されます。

もし、あなたの商品・サービスが思ったほどお客様から
支持されていないのであれば、
もしかするとお客様とあなたとで「信じていること」が
ズレているのかもしれません。
であれば、その信じるズレを次のように反論処理するだけで、
売れ方がガツンと改善することも夢ではありません。

例:
「○○については、危険だという認識をお持ちではないですか?
 確かに以前はそのような問題もありました。しかし、それは昔のハナシです。
 いついつ以降は、まったくそんな問題はなく、むしろ現在では最も安全な○○と
 いわれているくらいです・・・」

ぜひ、「顧客の信じるもの」の視点で、チェックしてみてください。

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