ローソンMACHI cafeから学ぶ差別化の注意点

今日は差別化について。
以前、『ローソンの「引き算戦略」から学ぶターゲッティングの盲点』という記事でも
紹介しましたが、ローソンの差別化戦略が私好みです。

―― 引用ここから ―――――――――

大手コンビニエンスストアがしのぎを削る「いれたて」のコーヒー商戦。セルフサービスによる「安くて早い」戦略が主流となる中、ローソンが展開する「MACHI cafe(マチカフェ)」は、店員による手渡しなど接客の重視と、品質へのこだわりで差別化を図った。親しみやすさと究極の便利を兼ね備えた“次世代コンビニ”の象徴となる可能性を秘めている。

■店舗全体の8割に設置

ここ数年、ローソン店舗内には、レジ付近に「MACHI cafe」のロゴの入った、コーヒー色の丸い看板が急増している。看板下に設けられたコーナーには、コーヒーマシーンが設置され、カフェに勝るとも劣らぬドリンクメニューがずらり。ブレンドコーヒーやカフェラテ、抹茶ラテ、シャーベット状のフローズンドリンクのグラニッテー…。季節限定商品も入れると15種類超の品ぞろえは、他のコンビニが展開するコーヒーサービスの中で抜きんでている。

ただし、ブレンドコーヒー1杯の値段は185円(税込み)、女性に人気のカフェラテは216円(同)。競合する大手コンビニが提供する「100円コーヒー」に比べると、割安感はない。マチカフェを担当する羽生知子・広告販促企画部マネジャーは「店舗の中にカフェショップを作るつもりで、接客重視のサービスを始めた」と、狙いを説明する。

ローソンが店舗でいれたてコーヒーの提供を始めたのは、2000年代初頭のこと。これが今一つ定着せず、てこ入れをはかったのが11年9月に全国展開を始めたマチカフェだ。

コンビニといえば、「会話をしなくても買い物ができる」「早くて便利」というイメージが強かった。そこをあえて「接客重視、絆(きずな)重視をコンビニでやろういう発想で始めたのがマチカフェ事業」と、MACHI cafe推進部の松本佳代子・シニアマーチャンダイザーは話す。羽生さんも「マチカフェでローソン全体を変えようという気持ち」と、心意気を語る。

コンビニ店舗でコーヒーを売るのではなく、「街中のカフェをつくる」発想だけに、雰囲気づくりは重要だ。

メーンターゲットは20~40代の女性に据えた。ホームページをはじめ、飲み物を入れるタンブラーやマグカップなどの関連グッズは、ほのぼのしたかわいらしいデザインにして、女性に好まれそうな世界観を作り出した。店内で流すBGMのオリジナルアルバムまで発売する凝りようだ。豊富なドリンクメニューや焼き菓子、サンドイッチなどの軽食も、おしゃれ感を意識した。コーヒー豆は、松本さんら担当チームが南米の農園に足を運んで厳選し、ミルクも加熱方法を工夫して甘みとコクにこだわった。マチカフェの設置数は昨年比倍増の9100店超となり、店舗全体の8割まで増えた。

■競合他社の「100円コーヒー」と差別化

一方、11年以降のマチカフェ事業の展開とほぼ時期を同じくして、競合他社の「100円コーヒー」がヒットした。社内でも当然、「価格重視の路線がいいのでは」という声はあったという。しかし、松本さんは「価格も品ぞろえも100円コーヒーに追随するのではなく、独自路線でいけばむしろ差別化になる」と説得した。「他社と同じことをやっていては勝てない」(羽生さん)。部署をまたいで構成するマチカフェ担当チーム約10人のコアメンバーたちは、そう考えたのだ。

品質重視に加え、マチカフェの柱となるのが接客だ。セルフサービスではなく手渡しで飲み物を提供するのは、主なコンビニではローソンだけ。多少の時間はかかるものの、ローソンには「接客のいい店舗は売れ行きがいい、という全社的なデータの裏付けがある」と、李明・広報担当はいう。

マチカフェのコーヒー提供も対面販売にこだわり、接客資格「ファンタジスター制度」を社内に設立した。店舗スタッフが資格を取得することで、働く意欲の向上につなげているという。「お客さまに選んでもらえる店舗を、マチカフェを通じて作りあげている」と、羽生さんや松本さんたち担当者は感じている。

マチカフェの存在感は着実に高まっている。軽食やドリンクを含む全体で、マチカフェのリピート率は50%。人気商品であるメロンパンの25%、おにぎりのシーチキンマヨネーズの30%と比較しても高かった。粗利率も、平均の30%に比べて50~60%あり、「稼ぎ頭」となる実力を備える。

「気づいたらこんなところにもマチカフェがある、というように世の中に浸透させたい」(羽生さん)と語る担当チームは、新たなコンビニ文化をマチカフェを通じて提供していくつもりだ。

SankeiBiz『【ビジネスのつぼ】ローソン「マチカフェ」、接客・絆を重視 次世代コンビニ象徴』
http://www.sankeibiz.jp/business/news/140804/bsd1408040500002-n1.htm

―― 引用ここまで ―――――――――

“社内でも当然、「価格重視の路線がいいのでは」という声はあったという。しかし、松本さんは「価格も品ぞろえも100円コーヒーに追随するのではなく、独自路線でいけばむしろ差別化になる」と説得した。「他社と同じことをやっていては勝てない」(羽生さん)。”

素晴らしいですね。
正直、ローソンの戦略が、本当に“当たる”のかは、
今後数年のコンビニコーヒーの動向を見ていかないとなんとも言えません。

ただ、やろうとしている方向性は、正しいです。

同業他社と比べて、高価格帯で勝負というのもイイです。
「お値段は、セブンイレブンの2倍します。
でも、スターバックスの半分以下です」
といったところでしょうか?

“羽生さんも「マチカフェでローソン全体を変えようという気持ち」と、心意気を語る。”

さらっと書かれていますが、このマチカフェ自体を、
ローソンの差別化のキモにしようとする狙いが見て取れます。

うまくコトが運べば、今後数年間のうちに“女性専門のコンビニ”、
はたまた“働く女性専門のコンビニ”とかにターゲットを絞っていくのかなと、
推察されます。

品揃えやサービスなど、自ずと方向性も決まってきますし、
相乗効果も出てきますから、よいこと尽くめでしょう。

少なくとも私の周囲の意見にはなりますが、
そもそもローソンのロゴやデザイン自体が、
(他社コンビニと比べて)女性に支持されているようです。

さて、とはいっても、もちろん

“コンビニといえば、「会話をしなくても買い物ができる」「早くて便利」というイメージが強かった。そこをあえて「接客重視、絆(きずな)重視をコンビニでやろういう発想で始めたのがマチカフェ事業」”

これを実行に移す“副作用”は大きいです。

駅前の集客力が高いコンビニ店舗は、朝の通勤時間は行列ができています。
ランチの時間も同様です。
そのような状態で、
“セルフサービスではなく手渡しで飲み物を提供するのは、主なコンビニではローソンだけ。”
を貫くのは、ある意味で、お客様がコンビニに求めているコトの
真逆を行くことになります。
批判を恐れず極端にいうならば、これは「脱コンビニ」への取り組みです。

差別化とは、お客様が自社を選ぶ理由ですから、
顧客にとって意味のある理由でなければなりません。

確かに、マチカフェの狙いは、一部顧客にとっては嬉しさに繋がり、
ローソンを選ぶだけの理由になります。

そして、同時に、そうではない、歓迎しない一部顧客にとっては、
ローソンを選ばない理由になります。

この比率が、いったいどのようになっているのか?
また、この比率を、どのように自社に有利な方へ改善していけるのか?
このあたりが経営判断としての難しいところでしょう。

もし、ここで普遍的なコツを挙げるとしたら、それは、
「徹底して、やりきる」ことです。

ローソンが私のいう脱コンビニ路線を進むならば、
「うちはサービス重視でスピードは捨てます。
レジに並ぶのが嫌なお客様は、どうぞ他店をご利用ください」
と、言い放つくらいの気概は必要でしょう。
(実際に、そう明言はしないまでも)

この差別化に対するリスクを軽減する手法としては、
試験的に一部店舗で導入してテストマーケティングを
することです。

ローソンほどの資金力があれば、
スターバックスの横にテスト店舗を出して、
どれだけ顧客の引き抜きができるかテストすることも
出来ると思いますが、
スモールビジネスでは、そういった初期投資のかかる
ことは、テストの実行自体が難しいですよね。

ただ、難しい、で止まってしまっては先に進めません。
・同一店舗で、時間帯によって別ビジネスを展開している
・店舗内に別店舗を設けている
といったビジネスから、そのままアイディアを借りれば、
突破口は見えてくるはずです。

脱線しつつ長くなりましたのでまとめます。

差別化は・・・

他所と違うことを、勇気をもってする。
勇気をもって、その差別化をやりきる。
でも、その前にまずはテストをする。

です。

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