マーケティングの機械化

週末のレビットアカデミー『サービス・マニュファクチャリング』です。
前回の『フレンチ・フライド・ポテトのオートメーション』からの続きです。

何度も繰り返しになりますが、ここで語られるマクドナルドは、
1970年初頭のアメリカのマクドナルドについて書かれたものです。

―― 引用ここから ―――――――――

マーケティングの機械化

マクドナルドのマーケティングに対するテクノロジーのアプローチを、別の面から見てみよう。ハンバーガーを包むペーパーは、香辛料の配合の違いを明示して色分けされている。混雑した時に備えて、温蔵庫にあらかじめ調理済みのハンバーガーが貯蔵されている。料理人のユニフォームが汚れないように、フライ器具には油はね防止装置がつけられている。偶然や従業員の自由裁量は何一つ入り込む余地はない。

システム全体が、厳密な技術的原理によって計画・実施され、素早くて清潔で信頼の置けるサービスを確かなものにしている。この雰囲気があるがために、ほどほどに安い給料の従業員にも、誇りや品質が備わっている。気の短い客が詰めかけても、どの従業員もうるさそうな表情や動作を少しも見せないから、客に悪い印象を持たせない。

しかしマクドナルドは、さらに上を目指している。建物の外観が食欲を減衰させるようなものなら、お客は店の中へ入るのを躊躇する。そこで、店の構造のデザインや外観は細かく配慮されている。

それでも、建築家の手では防ぎきれないこともある。特に、駐車した車の中で食事する客の多い場所では、ともするとハンバーガーの包み紙やカラになった飲み物の容器が地面に捨てられる、ということになりがちだ。マクドナルドはそれも計算に入れている。駐車場を一面黒に塗りそれにチェス盤のような線を引いて、その区画ごとに大型で、だらにでもわかるようなゴミ箱をたくさん設置した。ゴミ箱が何のために備えられているか、知らないふりをすることはできない。どんな無作法な客でも、自分のゴミを地面に放り投げれば、罪の意識にとらわれるはずだ。なかには投げ捨てる者もいるかもしれないが、大規模な店舗には清掃車が備えられていて、すぐにきれいにしてしまう。

すばらしい成功を収めているこの企業を理解する際に大切なことは、非常に洗練されたテクノロジーを創り出したということだけではない。本来、人間の労働に依存したサービスに、製造と似た発想を応用することで成功している、という点である。機会は、顧客を満足させる標準化製品を生み出す能力を持った装置と見なされているが、機会を扱う人間の自由裁量を最小に抑える装置ととらえ直すならば、マクドナルドの店舗はまさに機会そのものである。熟練を必要としない労働者の手を借りて、みごとな製品を生産する機械である。全体の設計と施設計画に努力を重ねることで、すべてのものが機械そのものへ、システムテクノロジーへ、組み入れられている。機械を動かす者に許されている唯一の選択は、設計者の指示通り正確に機械を動かすことだけだ。

セオドア・レビット『サービス・マニュファクチャリング』
(1972年ハーバード・ビジネス・レビューより)

―― 引用ここまで ―――――――――

ではまた。

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