製品ラインの変更によるサービスの効率化と質の変化

ビジネスにおける環境は日々刻々と変化します。

人間の欲求や感情というレベルでは不変なものも、
具体性を持つに従った別なモノに変化していきます。

たとえば、「痩せたい」という欲求自体は変わらなくても、
そのために具体的に欲する商材は、昔は運動方法や食事方法やサプリのみでしたが、
昨今ではば、歩行方法とか呼吸方法とかに発展しています。

今回紹介されるハネウェルのケースは、一般企業ではとてもマネすることはできないし、
学べることも少ないでしょう。

しかし、視点を変えて、自分のビジネスを変革できる点はないか、
それがどうなれば自分およびステークホルダーにとって理想的なのかを
考えながら読めば、かなり濃いインスピレーションを与えてくれると
思います。

―― 引用ここから ―――――――――

製品ラインの変更によるサービスの効率化と質の変化

サービスが、販売される製品に欠かせない部分だと考えられるようになると、製品そのものが変わる。この成果はすさまじいものである。61年、ハネウェル(アメリカ最大の制御装置等の機器メーカー)の建築用制御機器グループは、売上高の大半を取替用制御機の販売(補修市場)で稼いだ。この制御機の販売は、暖房機、エアコン販売代理店向けのものだった。代理店は、その製品を鉛管工事業者および他の取付業者ならびに補修専門業者に納品した。

当時、ハネウェルの製品は18,000近い種類があった。直接取引先の数はほぼ5,000を数え、どこも同社の全製品を完全に在庫することなど資金力からして無理だった。そこで、全国に100近くの倉庫を設け、そこに全製品を在庫として置き、代理店に対してすぐ納品する体制を取っていた。代理店が工事業者に部品を売るといっても、みずからは少しの在庫も持たずに商売をしていたのである。代理店は、近くのハネウェルの倉庫へ工事業者を直接連れていって必要な部品を選ばせるか、注文のあった部品だけを選んで代理店が倉庫から持ち帰って、それを工事業者へ直接納品する。それだけの在庫を維持するハネウェルのコスト負担は大きかったが、事業運営のためには正当な経費だと考えられていた。

そのころ、ハネウェルは、大胆な行動に踏み切った-この新政策を、「トレードライン・ポリシー」と宣言した。これにより100近くあった市場倉庫を全部閉鎖した。部品の在庫はすべて代理店が持たなければならなくなる。だが一方で、これまでの製品を再設計し、300種類の標準的で交換可能な部品に変えた。これら部品は、単にハネウェルの制御装置のみに交換可能なわけではなく、主要な競合他社の製品にの使えるようになった。そのうえ、部品のパッケージには、その部品で補修可能なハネウェル製品と他メーカーの製品の種類が明記されたのである。

倉庫の閉鎖により、いうまでもなく在庫保有コストは、代理店に転嫁された。しかし、代理店に新たな負担を課すのではなく、交換可能という特性を備えた新しい製品ラインを開発することにより、代理店の在庫量を劇的に減らした。特に、並行して補修を続けている競業他社の製品の種類を減らせれば、さらに必要在庫量を圧縮できる。したがってハネウェルは、顧客である代理店に対して、以前よりも安いコストで速いサービスを提供することができたのだ。

しかし、代理店の全部が全部、このトレードライン・ポリシーの利点についてすんなりと納得したわけではない。脱落した業者もあった。このやり方を受け入れた業者は、売上が急激に伸びたため、結局その先見の明は実証された。ハネウェルの補修市場占有率はおよそ倍になった。また、制御器のシェアはほぼ50%上昇した。以前、補修用部品の売上げの80%は、4,000の代理店に分散していたが、トレードライン・ポリシー導入後10年で、売上げの90%(売上量は倍増した)が、約900の代理店に集中している。顧客数が減少したためにサービス・コストはいちじるしく減少し、販売用の在庫保有コストはゼロになり、代理店向けサービスの質は飛躍的に向上した。たった900社の代理店で、以前の効率が悪かった4,000の代理店の時代よりも、大きなシェアを獲得できたのである。

この例においても、人間に依存していたマーケティング上の問題が、製造と同じ考え方を正しく応用すれば解決できるということがわかる。動機づけ、ハード・ワーク、訓練、仕入れのインセンティブはいらない。代わりに、系統だったプログラム、視野の広い計画、細部にまでわたる配慮が必要だ。特に顧客(この例では代理店)の抱える問題とニーズに対し、顧客の立場に立って関わることが求められる。

セオドア・レビット『サービス・マニュファクチャリング』
(1972年ハーバード・ビジネス・レビューより)

―― 引用ここまで ―――――――――

ではまた来週。

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