新参SNSに学ぶ、手っ取り早い差別化
あなたの扱う商品・サービスにはどんな特徴がありますか?
と問いますと、
「ウチは他の同業と比べて、品質がよい」とおっしゃる方がいます。
いわゆる「品質がウリ」です。
もちろん、品質がよいことはすばらしいことで、
品質が悪いと思っていることをお客様に提供するのは失礼です。
ただ、この品質というのは、やっかいなもので、
お客様の立場ではよくわかりません。
計測できませんし、主観の問題でもあります。
そして残念なことに、競合も品質がよいのです。
差別化やポジショニングを考えるうえで、
同業他社の強いところで勝負をしても、
「差がつきません」
つまり、「差別化できません」
こういう話を進めていくと、
「そんなことをいったら、ウチにはなんの特色もない」
とスネられてしまうかもしれません。
ですが、差別化とは顧客視点の問題ですので、
売り手の視点で考えていると、気づきにくいのです。
そして、視点を変えれば、意外と簡単だったりもします。
さて、アメリカで新参SNSが見事な差別化で人気だそうです。
―― 引用ここから ―――――――――
【9月30日 AFP】プライバシーと広告に関する方針がフェイスブック(Facebook)と対照的なことから「アンチ・フェイスブック」と呼ばれている新参の交流サイト(SNS)「Ello」(www.ello.co)が、わずか数日のうちに、人々が今、最も入会を熱望しているだろうウェブサービスへと上り詰めた。
Elloは昨年、「プライベートSNS」として立ち上げられたが、最近になって「招待制」へと移行。これを受け、限られた入会枠に希望者が殺到したため、インターネット競売大手のイーベイ(eBay)では、「招待」が最高500ドル(約5万5000円)で売りに出されているほどだ。またここ1週間で話題が広まった結果、招待の申請数が急増し、1時間当たり3万5000件に達したとも報じられている。
Elloの人気のポイントは、フェイスブックユーザーの不満の受け皿を狙ったともみえる単純なメッセージだ。運営会社は「Elloは広告をのせないし、あなたの個人データを第三者に販売もしない」と説明している。
Elloは「マニフェスト」でこうも述べている。「ソーシャルネットワークは、エンパワメントのためのツールになれると私たちは考えています。欺いたり何かを強制したり、操作したりするためのツールではなく、人がつながり、創造し、生きることを喜ぶ場です。皆さんは製品ではないのです」
またElloは、個人データを収集・販売することや、利益のために個人の社会的つながりの見取り図を作成する行為は「気味が悪く非倫理的」だと断じ、「『無料』サービスという見せかけの下に、ユーザーは押しつけがましい広告を受け取りプライバシーを失うという高い代償を支払っている」と批判している。
米バーモント(Vermont)州を拠点とするElloは、自転車やロボットの設計を手掛けたこともあるポール・バドニッツ(Paul Budnitz)氏らアーティストやプログラマーたちによるグループが立ち上げた。バドニッツ氏は「シンプルで美しく、広告がない」ようにElloを開発したと話している。
米メリーランド大学(University of Maryland)のソーシャルメディア専門家、ネーサン・ユルゲンソン(Nathan Jurgenson)氏は、斬新なElloの方針を歓迎している。「Elloがこれだけ注目を浴びているのは、違う政治姿勢を持つソーシャルメディアを約束しているからだ。われわれはソーシャルメディアが繁栄するのに伴い、あまりに一握りの人間たちにあまりに多大な力を渡してしまったことに気付きつつある」
Elloの急成長は、フェイスブックに対する同性愛者コミュニティーの批判とも重なった。実名ではなくステージネームで登録されているドラァグクイーンたちのアカウントを、フェイスブックが停止し始めたからだ。一方、Elloは実名登録を義務付けていない。
■収益モデルは?
Elloが一時的な話題で終わるのか、収益の出るビジネスプランを作成するのかは今のところまだ定かでない。Ello側は「使用料は一切なし」を貫くつもりだといっている。ただし有料で追加できるプレミアム機能の提供は始める可能性があるという。ただ、こうした類のビジネスモデルをElloが成功させ、その方針を維持できるのかという疑問も出ている。
しかし、立ち上げに協力したアラル・バルカン(Aral Balkan)氏は、Elloはベンチャー・キャピタルから43万5000ドル(約4770万円)の出資を受けている時点ですでに妥協していると批判する。プライバシー擁護団体「ind.ie」の創設者であるバルカン氏は短期間Elloで働いたが、その出資を知ってElloを去ったという。「ベンチャー・キャピタルから出資を受ければ、自分のサイトのユーザーを売り物にするつもりがあるか否かの問題ではなく、もうすでに売り物にしているということだ」とバルカン氏はブログに投稿している。(c)AFP/Rob Lever
AFP BB NEWS『「反フェイスブック」の新SNSに入会希望が殺到』
http://www.afpbb.com/articles/-/3027440?pid=0
―― 引用ここまで ―――――――――
「Elloは広告をのせないし、あなたの個人データを第三者に販売もしない」
とは、痛快ですね。
この差別化のポイントは、“共通の敵”を生み出したことです。
つまり、ライバルに対して顧客(今回ならばユーザー)が抱いている
不満、いらだち、怒りを利用して、その逆張りをするのです。
もちろん、“共通の敵”にされたFacebook側の言い分もあります。
Facebookに怒るユーザーの意見がすべて正しいワケではありません。
(タダで使って、広告ヤメロとか、正直わたしも理解に苦しみます)
ですが、ここで“正しい”のは“ユーザー”です。
“正義”は常に“お客様”にあります。
なぜなら、お客様がそう感じていること・思っていること、
がすべてだからです。
これに対して売り手ができることは、教育か切り捨てです。
(このハナシは長くなるので、また別の機会に)
さて、このElloは、手っ取り早く差別化に成功しました。
記事にあるように収益モデルは今後の課題かもしれません。
ですが、差別化は成功です。
さて、最初に戻って、品質について思い出してみましょう。
Elloは品質については述べていません。
(Facebookよりも)友達が見つかりやすいとか、
デザインがおしゃれとか、
便利な機能が充実とか、
他のSNSとの連動がどうとか、
セキュリティレベルが高いとか、
そういうことは一切いっていません。
「Elloは広告をのせないし、あなたの個人データを第三者に販売もしない」
以上です。
繰り返しになりますが、品質が悪いのはダメです。
第三者へ販売しないが、第三者から盗み見し放題では困ります。
ですが、差別化のアピールとしては、品質は必ずしも必要ではないのです。
さて、あなたの番です。
■Step1
“異業種”の友人の方に、“自分の業界”への不満を聞いてみましょう。
ストレートでいいです。
「ウチの業界にムカつくことって、なに?」
■Step2
いくつか答えを集めて、それがごく一部の個人の意見ではないのだとしたら・・・、
その反対は、どうしたら実現できるかビジネスモデルを考えます。
例:料金前払いが嫌だ→どうしたら料金後払いを実現できるか?
■Step3
逆張りアピールの商品・サービスが実際に売れるのか、
つまり差別化できている、もっというと購買決定要因になり得るかを
テストマーケティングしてみる。
できそうですか?
難しそうならば専門家に相談してみましょう。