だれもが使いこなせるシステム

「商品を売るなら、ベネフィットを売れ」
マーケティングを学べは、このような言葉は聞いたことがあると思います。

よく出てくる例は、「ドリルを売るなら、穴を売れ」とかです。
(この元ネタはレビット博士なワケで、いかにレビット博士が偉大かというハナシです

この格言の関連で、よくしがちな勘違いがあります。

それはなにかというと・・・・

「ベネフィットが欲しい」イコール「商品が欲しい」
というワケではないということです。

マーケティング・サービスのベネフィットとは何でしょうか?
売上げ、コストダウン、利益、客数、新規開拓、リピート等々、
ビジネスオーナーならば、まず間違いなく欲しいものです。

ですが、一般的な社長はマーケティングをやりたがらない、
というようなことを、以前書いたと思います。

マーケティングをやりたがらない理由の上位は、

「ほしいヒトを探すくらいなら、ほしくないヒトに売る方がラク」という、
マーケティングなんて回りくどくて面倒だ、というタイプと、

「いろいろ経営とか戦略とかいって、クチを出してほしくない」という、
これまで自分がやってきたことを変えること(否定されること)がイヤだ、
というタイプが、多いように思います。

このブログは、結構、同業(マーケティング関係)の方も、
多く読まれているようですので、この課題について私見を述べるならば、
マーケティングを売る際も、マーケティングの原則に従って、
(マーケティングを)ほしくなヒトに売るよりは、ほしいヒトに売りましょう
と、なります。

ちょっと脱線しましたので、ハナシを元に戻します。

ベネフィットが欲しくても、商品が欲しくない例です。

もっと分かりやすい例があります。
ダイエットについて。
「痩せたボディー」というベネフィットを欲しがるヒトでも、
「運動」や「食事制限」という商品は毛嫌いする、よくありますね。

さて、この2つの例について、なんでこうなるのかをひと言でいうと、
「人間の欲望にはウラがある」ということになります。

マーケティングを嫌う経営者の一例の欲望を正しく表記すると
「これまでのやり方を変えず、ラクに、金をかけず、手っ取り早く」&「儲けたい」
です。

ダイエットできない方の一例の欲望を正しく表記すると
「運動も食事制限もせず今のままの生活習慣を変えることなく」&「痩せたい」
です。

あくまで一例なので、他にもウラの欲望はあります。
マーケティングならば、恥をかきたくないとか、非難されたくないとか。
ダイエットならば、リバウンドが怖いとか。

というわけで、欲望を叶えるために支払う代償(特に金銭以外)に注意を払わないと、
商品がよいのに売れない、ということが起こりやすくなります。

さて、本日レビット博士が挙げる例も、まさにそんな感じです。

―― 引用ここから ―――――――――

だれもが使いこなせるシステム

オーバーな表現にも、それなりのメリットがないわけではない。特に恋愛と戦争においてはそうだ。ところがビジネスにおいては、特に相手を納得させようとする場合には、オーバーな表現は慎まなければならない。製造の発想を正しく応用すれば、サービス業および製造業の顧客サービスが改善することは間違いない。しかし、テクノロジーを多く使えば使うほどサービスがよくなる、というわけではない。

経営者の歩んだ道を振り返ってみれば、<T型フォード>も扱えない者に<キャデラック>級のテクノロジーを組み込もうとして失敗した例が、いくつも見受けられる。大成功を収めたテクノロジー企業による、資金にも恵まれたジョイント・ベンチャー2社の失敗例を基に、右の提言について説明してみよう。

両者は、医者・病院向けに、コンピュータによる診断サービスを提供するために設立された。初めに、中央の診断用コンピュータに接続する小型端末機が開発された。これを使えば、どんな医者でも、患者の症状を診断するためサンプルを病理学研究所に送り、頭を抱えて医学書をひっくり返す必要はなくなるはずだった。

失敗の原因は、病院と医者からの抵抗で、提供する製品の質が悪く信頼が置けなかったからではない。顧客(病院と医者)は、いままでの慣れたやり方を突然大きく変更しなければならないこと、しかも見たこともない不気味な機器を備えつけて、その使い方やアウトプットの解釈に特別訓練をうけなければならないことに、猛反対したのである。

先生と生徒が対話しながら学習するティーチング・マシンも、これと似た運命に遭遇しつつある。個人教授方式は、学習効果も目覚ましく、能力向上への欲求は明らかに高くなる。この方式による学習を受けたいという要望はますます広がりつつある。

ところが、ティーチング・マシンは、さっぱり売れない。その理由は、同機器が最先端のテクノロジーを採用したシステムによって、つくられたところにある。それら機器を使わなければならない教師や教育委員会は、これまでも新しいテクノロジーは簡単なものでも理解できなかったため、初めから気後れしてしまっている。教師や教育委員会にとっては、新しいキャデラック級のテクノロジーは、少しも問題を解決してくれない。新たな問題を生み出すだけなのである。

セオドア・レビット『サービス・マニュファクチャリング』
(1972年ハーバード・ビジネス・レビューより)

―― 引用ここまで ―――――――――

・・・マーケティングのヒントとしては、
良い、けれどもあまり売れない商品・サービスがあったとして、それを改善するならば、
買う理由よりも、買わない理由を突き詰めた方が、
はやく売れる商品・サービスに化けさせることができるようになります。

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