工場の発想をサービス活動に
今日で、『サービス・マニュファクチャリング』は完結です。
補足になりますが、
レビット博士は、製造業の発想を取り入れていないサービスを、
仕上がりが一定しない職人の手仕事、と喩えていますが、
ここでの職人はアメリカの職人です。
自然とイメージしてしまう日本の職人は、機械よりに仕上がりが一定ですので・・・。
―― 引用ここから ―――――――――
工場の発想をサービス活動に
顧客サービスが、自由裁量に任させることはめったにあってはならない。サービスはものとしての製品と同じく、ビジネスを続けるための必要物である。顧客サービスが意識的に「工場の外での製造」と考えられるならば、製造と同じような細やかな配慮が受けられるはずである。すなわち、十分に計画され、可能な限り自動化され、品質管理のための監査が行われ、定期的に性能の向上と顧客からの反応を吟味するに違いない。さらに大切なことは、技術的かつ省力的でシステマティックなアプローチが、製造分野で脚光を浴びており、それと同じアプローチが顧客サービスやサービス業でも使われるきっかけとなることである。
サービス産業の経営者や顧客サービス・プランの発案者が、自分達は現実にひとつの製品を製造していると真剣に考え始めるとしたら、メーカーの製造担当者のような発想をするようになるだろう。すると、次のような質問が出るはずだ。「ここで採用できるのは、どんなテクノロジーとシステムか」「人間の代わりに機械を、人間の思いつきの代わりにシステムを利用できるようにするためには、どう設計すればよいのか」
顧客サービス担当者、保険代理店、銀行支店長、または「遠く離れた働く」営業担当者に対する訓練を充実させ、回数を増やす代わりに、彼らをどのようにして減らしたり補充したりするかについて考えるようになるだろう。
サービスは機械やシステムではなく個々の人間が行うものであるという考え方を捨てない限り、次の2つの歪んだ考え方による害を受けるだろう。
第一に、サービスは最終的な現物-有機財としての製品や、特殊な能力(ローンの評定、最適な保険契約の作成、医療のアドバイス、業務量食材の調理など)にとっておまけである、とする考え方である。そうなると、余剰物のような評価しか受けないうえ、おまけの配慮しか得られない。結果、余剰人員がする仕事になってしまう。
第二に、サービスを純粋に人間でなければできない仕事として扱う考え方である。そうなると、一人の人間が誰の助言も仰ぐことなく一人で判断し、実行するものだと考えられてしまう。せいぜい、訓練という初歩的な手助けがあったり、研修講師などの精神論を聞くくらいである。すると有形財には存在する製造型の発想法はけっして取り入れられない。
サービスがいままでよりももっと実証的で、広範な視野をもって考えられない限り、工場外における製造と同様に考えられない限り、また工場で用いられているテクノロジーと同種のアプローチを取り入れない限り、生み出される成果は手仕事でコツコツとものを刻んで一人で仕事をする職人とおそらく変わらない。コストが高いうえに、仕上がりの一定しないものになってしまうだろう。
セオドア・レビット『サービス・マニュファクチャリング』
(1972年ハーバード・ビジネス・レビューより)
―― 引用ここまで ―――――――――
加えて、私の持論を述べるならば、
サービスレベルは一定に保つ必要がある、これはレビット博士と同意です。
あえて具体的な名前は挙げませんが、ある著名企業は、
フランチャイズを推し進めてコストダウンを図った結果、
直営店では保てていたサービスレベルが、フランチャイズでは維持できず、
結果、あそこのサービスが劣悪になったと顧客の不支持に苦しんでいます。
現代日本の消費をみるに、サービスレベルを一定に保つことは、
ブランドイメージを保持することと同じ意味です。
そして、いまでは、この更に先が求められます。
ワントゥーワン(one to one)マーケティングと呼ばれるように、
ある意味で、顧客獲得・維持のキモが、
”どれだけ自分(顧客のこと)を特別扱いしてくれるか”
に完全に移りつつあります。
あなたのビジネスが、”行きつけのお店”のように顧客に認知される・・・
まさに、あなたの望む理想の姿に近いことでしょう。
そうであるならば、
あなたにとっての”行きつけのお店”が、
どのような”スペシャル”サービスを提供しているかを、
よくみてみましょう。
例:注文が「いつもの」で済む。
完結しましたので、以下バックナンバーです。
どんな産業にもサービスの要素がある
製品は工場内で、サービスは工場の外で
サービスの問題は「心の姿勢」に帰せられるのか
製造の論理が約束するもの
サービスに製造の発想を取り入れたマクドナルド
店主の意思を入れる余地のない店舗
フレンチ・フライド・ポテトのオートメーション
マーケティングの機械化
サービスを道具で武装せよ
厨房室の鏡ひとつが訓練以上の効果を示す
ソフト・テクノロジーによるサービスの高品質化
工場外で製造された製品の効力
製品ラインの変更によるサービスの効率化と質の変化
だれもが使いこなせるシステム
中途半端な妥協が失敗の原因
顧客が何を求めているかで製品を定義する
アイスクリームメーカーの惨敗
工場の発想をサービス活動に