顧客視点なきスペシャリスト追求の落とし穴
顧客視点なきスペシャリスト追求の落とし穴
これも、「お客様には無価値な品質競争」と同様の落とし穴があります。
たとえば、料理人、美容師、デザイナー、技術者、コンサルタントなど。
自分の専門分野についてスペシャリストを目指します。責任感とプライドを持って技術を磨きます。
終わりはありません。
まさに、串打ち三年、割き八年、焼き一生です。
別になにも悪いようには思えませんし、わたくしも賛成です。
わたしは仕事がら、ある職業のスペシャリストの方とお会いする機会が多いのですが、一様に感じるのは、すごくスペシャリストであるのに、「わたくしなんて、まだまだ」と仰る方がとても多いように感じています。
もちろん、謙遜の意味もあるのでしょうし、やればやるほど奥が深いということもあるでしょう。
しかし、なかには、「まだまだ」だから「まだ、できない」という方がいるのです。
もちろん、このような自称「まだまだ」な方たちは、わたしから見れば、十分なスペシャリストなわけです。
そこで「まだまだ、とご自身では思っているかもしれませんが、さっさと価値を提供しましょう」と伝えても、その答えは、「いや、まだまだ・・」となります。
あなたの業界でも、このような意味で「まだまだ」という方はいらっしゃるのではありませんか?
これは、端的にいうと、同業種の中で、自分のスキルや専門性を比べているから、なのだと思います。
つまり、「うちの料理は、有名な○○シェフには及ばない」とか「わたしのアレンジメントなんて○○先生に比べたらとてもお恥ずかしくって」とか「○○ができないうちは一人前ではない」というわけです。
連日読んでいる方は、もうお分かりかと思います。
ここにも「顧客視点」がまったく抜けています。
ターゲットとなる顧客が決まれば、あなたの価値を提供すべきかすべきでないか分かります。
曲がりなりにもあなたはその技術を身につけているのです。
例えば、わたしはアマチュアですが、ちょっとは将棋が指せます。
プロを目指す子供に将棋を教えることは恐れ多くてできませんが、ルールも知らないひとには将棋のルールや囲いを教えることはできます。
これを教えるのに、自分がプロ棋士になるのを待つ必要はありません。
そして、プロ棋士の先生。
年齢は若くても、将棋の普及のために、子供たちを指導したり弟子を取ったりします。
そのような方でも、もちろん名人クラスに将棋を教えることは恐れ多くてできません。
つまり、「まだまだ」かどうかは、その価値を提供するターゲット次第なのです。
もし、あなたが「まだまだ」信仰があるならば、
あなたの「まだまだ」な技術は、どなたに、どのように提供するなら価値を生むのでしょう?
続きます。